IT・デジタルの活用により、多くの業務がシステム化されている現在、システムの多様化や複雑化により人的管理には限界があり、自動化はエンタープライズIT運用効率化やシステムの堅牢性において重要な役割を果たしています。
そうした中、2015年に世界初のクローズドループ自律型ソフトウエアとして、米国から展開を開始したAI/ML(Machine Learning:機械学習)ソリューション「ignio」。2017年からは日本での展開も開始し、グローバルで270社以上が導入しています。
お客さまの利用するテクノロジーや管理製品群に依存しないソリューションとして、幅広い業種で活用されているignioがさらに進化。企業の大規模なデジタル変革の取り組み開始・加速に役立つ、豊富な製品・ソリューション群「Dragonバージョン」が発表されました。
AI搭載の自動化ソリューション「ignio」の最新アップデート情報を、ignioを主力ソリューションとしてグローバル展開するDigitate(ディジテート)社の佐藤遼氏に報告してもらいました。
TCS のベンチャーとして2015 年に設立。米国カリフォルニア州サンタクララのシリコンバレーに本社を持ち、インドに開発拠点を持つ。主力ソリューションのignio は、AI と機械学習、先進的なソフトウエアエンジニアリングを組み合わせた独自の設計により、企業のIT、ビジネス、開発オペレーションを変革。AI や機械学習の機能、インテリジェント自動化や知識工学における領域で90 以上の特許を取得している。
「自動化」というと、導入によって得られるメリットとして、コスト削減を思い浮かべる方が多いと思われます。これまで人がしていた作業を何%自動化することでコストが何%下がるか?確かにそれもビジネスにとっては大きな課題ですが、ひとたびシステム障害が起きた場合、その障害によって企業が被る損失の方が桁違いに大きいことは、昨今のニュースをご覧になっても明らかでしょう。
IT オペレーションのさまざまなプロセスが今や自動化されていますが、その多くは定型的な命令をそのまま実行するRPA(Robotic Process Automation)で、学習能力はなく、非定型タスクに対応することはできません。ignio が提供する価値として最も大きいものに、「エンタープライズ・レジリエンシー(Enterprise Resiliency)」があります。レジリエンスとは一般的に「復元力、回復力、弾力」を表す言葉です。つまり、IT システムのレジリエンスを高めることで、システム障害を未然に防ぎ、ビジネスがストップするという最悪の事態を回避して、企業の持続可能なビジネス自体のレジリエンスを高めます。自動化によってシステムを常に正常な状態に保つことは、カスタマーエクスペリエンスの向上とともに、企業を膨大な損失から守ることでもあるわけです。
ignio は、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)のこれまでの運用経験やナレッジ、ノウハウにAI/ML を組み合わせてIT 分野におけるリソースの多くを占める非定型タスクの自動化も実現しており、定型・非定型を問わず、また、インフラ、アプリケーションにとどまらないエンタープライズのオペレーションを自動化できるシステムです。また、さまざまなビジネスプロセスの状況を分析して、自動的にダッシュボードの形で結果を出す機能を持っていますので、何らかの意思決定をする際、さまざまなデータを集めることに相当の時間を割いている企業にとっては、意思決定のスピードや効率、チーム編成や役割分担のフレキシビリティなどを向上させるということも大きなメリットです。
自動化というと、人の業務を奪ってしまうイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、「時間」や「効率」を生み出すことで、より付加価値の高い業務に社員が集中できるようにして、企業がさらに高い生産性を実現できるようにするという価値を提供します。
昨今のDX 推進や、企業のIT 人材の確保や有効活用に向けた支援には、こうした自動化ツールの活用は欠かせないでしょう。エンタープライズを構成するIT、ビジネス、そしてDevOps(開発+ 運用)を支えるテスト開発自動化を、単一のプラットフォームで提供し、お客さまの組織の自律化(Autonomous Enterprise)の実現に向けて機能拡張を続けています。
なぜignio がそうした課題に答えを導けるのでしょう?「ignio」は、TCS の100%子会社であるソフトウエアベンチャーDigitate 社が開発したAI 搭載のソフトウエアです。優れた「認知」「論理的思考」「実行」の力を生かして、自らIT 環境を「学習」し、システムに障害が発生した場合にはすぐに「解決」、さらに障害が発生する前の「予防」も実行します。この「学習」「解決」「予防」という3つのコア機能によって、ignio は多くの企業のシステムの安定運用と業務効率の大幅な向上を実現しています。
ignio は、アプリケーションやIT インフラなどに関するIT ナレッジをあらかじめ搭載しているので、他のAI 関連製品においてしばしば課題となる長い学習期間を必要とせず、導入直後から周囲のビジネス環境を素早く理解し、最適な判断をしてくれます。
ignio の特長としてもう一つ特筆すべきことは、「自動化」と「分析」の機能を併せ持っている点です。例えば、毎週同じタイミングでシステムの利用頻度が跳ね上がるという事象があった場合、一般的な分析ツールだと、設定によっては頻度が急上昇するたびにアラートを発する可能性があります。しかし、日々のシステムの利用状況やIT環境におけるシステムの処理機能を学習しているignio では、それを“ 通常の振る舞い” と認識し静観します。逆に、さほどの頻度ではなくても、それが普段ほとんど利用されない平日の深夜などだった場合は、“ 異常な振る舞い” と判断して通知、さらに原因を見つけ出して、必要な作業を自動で実行することまでできます。つまり、経験を積むことでさらに賢くなっていくシステムなのです。
こうしたignio のナレッジおよび機能により、ある金融機関のお客さまでは、これまでデータサイエンティストが数週間かけて行ってきたバッチジョブの変更による影響分析も、ワンクリックするだけで高い精度の予測を実現、金融ビジネスに多大な影響を与える障害の予防が可能になりました。また、小売業のお客さまでは、毎日の店舗や倉庫のシステムの正常性確認の自動化により、日々の小売りビジネスのオペレーションがスムーズになるとともに、ignio によるプロアクティブな障害排除により、ビジネス損失のないオペレーションが実行されています。
ignio は、特定の OS やアプリケーションに依存しないソリューションで、どんなIT 環境にも幅広く対応するよう最適化されています。環境を学習・理解し、最適な形で処理を自動化するよう設計されていますので、導入先の業界を問わず、基本的にはあらゆるシステムで利用できます。さらに、企業にとっての利便性を高め、企業が抱えるさまざまなビジネス課題に対応するために、2022 年1 月リリースの最新バージョン「Dragon」では、「プロダクツ」として3つのカテゴリーに6つのモジュールと4つのソリューションをラインアップしました。個別のモジュールを見比べてみると競合する製品はありますが、一つの製品群でこの3つのブロックを網羅するものは他に例を見ません。この守備範囲の広さはignio の明確な特長と言えるでしょう。
日本市場では2018 年以降、「AIOps」の分野を中心に展開し、小売企業や商社、ライフサイエンス系企業などに導入されました。同時に日本語対応や導入企業既存システムとの連携なども行われています。この6 つのプロダクツに加え、モジュールの中で特別によく使われ、短期間で効果が見込まれる機能群だけをまとめて切り出したものを「ソリューション」として用意しました。さらに、ignio が持っているベース機能をクローズドループ・モジュールとして切り出したものも数種類あります。一つは、メトリクス、アラート、およびログをカバーする包括的な監視モジュール「ignio Observe」です。システム上の問題を事前に特定して予測し解決策を提供します。
また、日本企業のお客さま向けに、日本独自のプロセスや商習慣などをカスタマイズして使いやすくするための「ignio Studio」というモジュールも持ち、これを使ってカスタマイズなどを柔軟に対応していくという構成を取っています。
こうしたソリューションベースとは別に、多くの企業でSAP S/4HANA への移行が進んでいることから、ignio とS/4 HANA 自体の自動化を組み合わせ、効率の良い運用を図るという機能拡張も行いました。
さらに、ignio をより早く、より効率的に導入していただくために、必要なインフラはわれわれが用意するSaaS モデルもラインアップしました。オンプレミスによる導入だと最低2 カ月はかかりますが、SaaS モデルだとサーバーの設定、ネットワークへの接続などの基礎作業と調達の部分が省略でき、最速わずか2、3日で導入できるケースもあります。SaaSモデルも含めさらに進化したignio で、企業価値向上への貢献を目指します。日本の産業活性化に向けたDX 施策の一つとして、皆さまとお話しできることを楽しみにしています。
※掲載内容は2022年6月時点のものです。