花王株式会社
SAP Central Financeの導入により次世代経営情報システムの基盤を構築。
迅速な経営情報提供による意思決定支援を可能にし、グローバルなグループ経営を加速し、アジリティ(俊敏性)と高度化を実現。
花王株式会社(以下、花王)様は、世界中に数多くのグループ企業を擁し、グローバルにグループ経営を推進されています。このグループ経営を加速・高度化し、組織全体でアジリティを実現するためには、世界中のグループ企業を含め、売り上げ・利益などの経営指標を迅速に把握・分析し、的確な意思決定を行う必要があります。その実現に向け、花王様は2000 年代初頭に基幹システムとしてSAP を導入。現在では花王グループ企業の約95%がSAP を基幹システムとして採用しており、各社がSAP を活用して経営層への報告や月次レポートを作成する体制が確立している一方で、解決すべき課題も存在しました。それは、四つのインスタンス(サーバー)に分かれてSAPの運用を行っていたため、グループ企業の会計情報が点在していたという点です。そのため、グローバルな経営指標を把握するためには、4 インスタンスからデータを収集し、手作業でレポートを作成するという、多大な労力と時間を要する作業が必要でした。また手作業によるレポート作成は、業務負荷の増大と入力ミスのリスクをはらんでいました。花王様がグローバルな会計情報分析のさらなる精緻化、そしてより迅速な経営情報提供による意思決定支援を強化するためには、こうした作業を自動化する会計情報基盤の構築が必要不可欠でした。
会計情報基盤の構築に向けて、花王様はSAP のCentral Finance を導入し、次世代経営情報システムを構築するプロジェクトに着手されました。CentralFinance は、グループ経営管理基盤を実現するSAP S/4HANA の拡張機能プログラムです。花王様の会計財務部門 管理部長の牧野秀生様は、プロジェクトの目的について次のように語ります。「当社にとって、経営指標に関する情報をタイムリーに見える化し、グループ経営を強化・推進していくことは喫緊の課題。SAP から発表されたCentral Finance を活用すれば、グローバルの売り上げや利益などの情報がデータウエアハウスへ瞬時に集約できると聞き、これこそが当社が求めているものだと感じました」
次世代経営情報システムの構築は、2 段階に分けたアプローチで進めることとなり、その第1 ステップとして、「グローバル・マネジメント・アカウンディング・プラットフォーム(GMAP)」の構築プロジェクトがスタート。GMAP プロジェクトのスコープは以下の実現でした。
各社横並びの財務諸表を表示するために必要なマスタ連携、マスタ変換を実施プロジェクト開始に当たり、花王様のPoC(概念実証)に対して複数社が提案し、最終的に日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)がパートナーとして選定されました。情報システム部門ESM 部 CS グループ 課長の田中 昇様は、「選定の決め手となったのは、日本TCS本社のSAP Innovation Lab Tokyo での、当社のデータを用いたCentralFinance のシミュレーションの実施でした。当時、日本国内のCentral Finance導入事例はほとんどなかったため、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)がグローバルに蓄積したSAP の知見に大いに期待しました」と振り返ります。
GMAP プロジェクトのキックオフは、2017 年6 月。花王様、日本TCS、そしてSAP の三位一体で進められました。
Central Finance はSAP の最新技術であったことから、プロジェクト初期には想定外の問題が発生したといいます。
特に、4 インスタンスで起票された会計伝票の情報をCentral Finance に再転記する際に生じる不具合については、花王様、日本TCS、SAP の3 者が知恵を出し合い、時には試行錯誤を繰り返して解決したと話すのは、情報システム部門ESM 部長の小久保克也様。
「Central Finance には、1 日に約30 万件の会計データが世界中から送られてきます。グループ企業の業務内容に応じて、あらかじめCentral Finance をカスタマイズしてはいるものの、例外的な処理が発生した場合にはデータ更新時にエラーとなることもありました。日本TCS は、それら一件一件について原因を調査し、再現データを作成。Central Finance の機能に関連する課題に関しては、SAP技術者とのハブとしての役割も担ってもらいました」(小久保様)
また本プロジェクトで作成するレポートの中には、管理会計の連結レポート等、出力時に比較的複雑なロジックを必要とするレポートもありました。レポート作成に関して日本TCS は、グローバルのTCSメンバーの中でもSAP ソリューションのスペシャリスト集団であるCenter ofExcellence(CoE)と連携。膨大なデータであるため、当初はレポート出力のレスポンスに問題がありましたが、インドのCoE とも連携しながら、徐々に最適化していきました。
また花王様はSAP とMaxAttention ※の契約をされており、今回のGMAP プロジェクトでは、SAP 技術者のプロダクトに関する卓越した知見が役に立ったといいます。
「当社とSAP は、長年強固なパートナーシップを築いています。今回のプロジェクトでもMaxAttention のサービスを活用しました。最新技術であるCentralFinance の実装、当社の業務への活用に向け、SAP のメンバーが深く関与してくれました」(田中様)
※ SAP が提供する最上位のサポートサービス
本プロジェクトで構築したGMAP は、2018 年9 月に稼働を開始。現在は、Central Finance を通じてグループ全体の統合された会計情報を俊敏に取得することで、経営層によるより機敏で迅速な経営判断が実現しつつあるといいます。また各グループ企業の会計情報を一元的に把握できるため、制度会計と管理会計のレポートが食い違うようなケースを洗い出すことが容易になりました。加えて、本プロジェクトの成果により、花王様の事業戦略が進化する可能性さえあるといいます。
「GMAP の稼働により商品ブランドごとの経営指標がグローバルかつタイムリーにわかるようになり、今後はブランド別の事業戦略をより高度化することが可能となります」(牧野様)
今後、花王様は次世代経営情報システム構築プロジェクトを次のステップに進めていかれます。本システムの最終形は、「プッシュ型」。つまり、会計上の気付きをシステム側から自動的にサジェストするような仕組みとその業務プロセスでの活用です。そうした環境を目指す上で、小久保様はTCS がグローバルに蓄積している最先端の知見に期待していると話します。
「 私たちの夢を実現していくために、TCSそして日本TCS には、テクノロジーパートナーとして太い綱のような存在になってほしい。Central Finance にとどまらないSAP の知見、そしてデータ解析などにおける、スタートアップを巻き込んだエコシステムにも可能性を感じています」
日本TCS は、次世代経営情報システムの構築、そして世界で培ったAI 等の最先端技術のご提案を通じて、花王様のグローバルビジネスを引き続きご支援してまいります。
牧野 秀生 様
花王株式会社
会計財務部門 管理部長
小久保 克也 様
花王株式会社
情報システム部門 ESM部 部長
田中 昇 様
花王株式会社
情報システム部門 ESM 部
※掲載内容は2019年8月時点のものです