富士火災海上保険株式会社
ITアプリケーション開発・保守サービスの変革
グローバルレベルの業界標準プロセスでITアプリケーション開発・保守サービスを変革
富士火災海上保険株式会社(以下、FFM)様は、日本国内に1,500万人の契約者を抱える日本有数の保険会社であり、個人・中小企業向けの卓越した商品やサービスを提供しながらビジネスポートフォリオを大幅に拡大させ、着実に成長を続けています。FFM様にとってさらなる成長を目指す上で、IT運用コストの削減やITプロセスの変革は欠かせない要素であり、それがひいては顧客満足度やコスト管理の向上にもつながる重要な経営課題の一つです。
AIGジャパン・ホールディングス・グループの一社であるFFM様は、こうした課題の解決に向け、グローバルレベルの業界標準プロセスを導入し、スケーラブルで柔軟かつコスト効率の良いモデルを実現すべく、ITアプリケーション開発・保守サービスの変革に乗り出されました。
タタコンサルタンシーサビシズ(TCS)はグローバルにAIG様の戦略的パートナーを長く務めており、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)では、TCSのグローバルレベルのベストプラクティスをベースに、FFM様のアプリケーション開発・保守サービス(ADM)を担うことになりました。本プロジェクトにおいて日本TCSは、グローバル・ネットワーク・デリバリー・モデル(GNDM)を活用し、体系化されたアプリケーション保守サービスを導入するなど、FFM様のITアプリケーション保守ポートフォリオの変革を成功に導く上で中心的な役割を果たしています。
FFM様のアプリケーション保守のポートフォリオは、100を超えるエンタープライズアプリケーションと技術が、レガシーシステムとオープンシステム上で稼働しており、それらが自動車、火災、傷害、損害システムといったFFM様の多岐にわたるサービスラインに対応しているという非常に複雑なものとなっていました。そのエコシステムを標準化、統合、最適化することが本プロジェクトの最大のミッションでした。
これだけ大規模かつ複雑なシステムの移行にはさまざまなリスクが伴いますが、豊富な経験を持つ日本TCSでは、オペレーションのシームレスな移行を確実に成功させるために、FFM様の状況に合わせた包括的な計画を策定し、この変革構想に全体的な視点で取り組みました。
プロジェクトは2012年11月にスタート。①現場に存在するナレッジを、より大きな戦略構想のために結集・活用できるようにする、②サービスデリバリープロセスの標準化と体系化されたプロセスを導入する、③ITの統合と最適化により、保守・運用費用を削減する、④業務効率および生産性を向上する、⑤継続的向上の枠組みを確立する、という具体的目標の達成に向け、FFM様と一体となって保守・運用の改善に取り組みだしました。
今回のプロジェクトで最も重要なポイントであり、なおかつ複雑な問題だったのが、FFM様で長年の間にアプリケーションに関する豊富な知識を取得した「Subject Matter Expert(対象分野の専門家、SME)」といわれるIT部門スタッフが持つナレッジを活用することでした。そのためプロジェクトの初期フェーズにおいては、約6カ月をかけてSMEの持つナレッジを適切に把握・可視化し、標準作業手順書や技術マニュアルとしてドキュメント化することに注力しました。
FFM様のIT チームに日本TCSのスタッフが入り、状況をヒアリングすると同時に多くのセッションを行うことで、FFM様との信頼関係を築きながらナレッジの効果的な捕捉や、アプリケーションやプロセスの理解に努め、段階的にIT保守業務の移行を進めていきました。
またFFM様のニーズにきめ細かく効率的に対応するため、オンサイトにITサービスデスクを設置しました。これはFFM様とのコミュニケーションをワンストップに行うためのもので、課題が生じた時にはまずこのデスクが対応しました。こうしたサービスデスクの設置は、サービス体験をチーム全体で標準化する上でも役立ちました。
今回のプロジェクトにおいては、FFM様のIT部門の皆様と緊密にコミュニケーションを取りつつ、さまざまな工夫や新たな提案を行いながら進めました。
ナレッジのドキュメント移行に際しては、その有効性をSMEが確認する仕組みを構築することで、ナレッジが散逸するリスクを低減しました。また、オペレーションに支障を来すことのないよう、アプリケーションのサイズや重要度に応じて、リスクを低減し品質を上げるために各ビジネスグループにそれぞれ数人の社員を残留させることも提案しました。
オフショアを活用した体制づくりでは、日本TCSのプロジェクトチームにバイリンガルメンバーとTCSグローバルのメンバーも加わりチームが編成されました。その一方で、プロジェクト期間中は定期的にFFM様がTCSのグローバルデリバリーセンターを訪問されるとともに日本TCSのオフショアメンバーがFFM様の現場に足を運ぶなど、双方の理解を深め、文化の違いを乗り越え、より良いコミュニケーションや協力関係の構築にも努めました。また、ビジネスニーズをより把握し、今後のビジネス向上の機会を創出するため、今回の移行では、アプリケーションを機能性に基づきグループ化しました。
手戻りを減らし、効率性と生産性を高めるための継続的向上の枠組みの構築もまた、今回のプロジェクトの重要課題の一つでした。ツールの活用、プロセスの標準化、自動化、デジタル化といった要素が、継続的な向上の基盤を築く上で中心的なテーマとなりました。
これらに加えて、コスト効果を最大化するために幾つかのポイントに留意しました。まず移行のタイムラインやフェーズ数を増やさないこと。次にFFM様のシステムチームが今回の移行作業に拘束されるのを極力抑えること。またシステムの最適化と統合によってサービスデリバリーを向上させること。加えて、プロセスを自動化させることで手作業による労力とミスを低減させることなどです。
こうした取り組みの結果、既存のプロセスは自動化され、コストの削減および生産性の向上が達成されました。また業務のデジタル化によってFFM様のITチームの負担は60%削減され、SMEはより戦略的・高付加価値のプロジェクトに注力できるようになりました。
こうして、IT運用の変革に成功したFFM様は、最適な運用により効果を発揮するとともに、さらなるカスタマーエクスペリエンスの向上に向けて継続的な改善を行っています。
FFM様のシステムサービス部長の山本直弘様からは、「オフショア環境、運用手順、ドキュメンテーションの品質に感心しました。また、オフショアメンバーは日本語に長け、独自のツールを考案・活用するなど、大変意欲的で、時間のかかるルーチンタスクの自動化などに熱心に取り組んでくれたことに感謝しています」とコメントを頂きました。FFM様のCIOであるスレッシュ・ジャマダグニ様からは、「日本TCSとのパートナーシップはわれわれにサービスデリバリー品質の向上と、最新の標準化に準拠した効率的なモデルをもたらしてくれました。日本TCSには、ビジネスの俊敏性のさらなる向上と効率化を目指すわれわれの道のりを共に歩むパートナーとして今後の提案にも期待しています」とご評価いただきました。
引き続き日本TCSは、グローバルな知見を活かしFFM様のビジネスをサポートしていきます。
※掲載内容は2016年11月時点のものです