コーナン商事株式会社
ホームセンターチェーンを全国展開し、国内売上高3位を誇るコーナン商事株式会社(コーナン商事)。中期経営計画における“店舗業務の効率化戦略”と“店舗デジタル化戦略”実現に向けて、従業員向けスマホハンディアプリ『NAVI-KO』の開発プロジェクトを立ち上げました。日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)は、アジャイル開発とグローバルリソースを活用したハイブリッド体制により、親しみやすく、業務の実行が楽しくなるような工夫を取り込んだスマホアプリの構築をサポートしました。
アジャイル開発の特性を生かし、メジャーリリースを約3カ月に1回繰り返しながら、約2年にわたり、現行ハンディ機能の移植、商品検索、新機能の3チームが同時並行で稼働。『NAVI-KO』により既存機能を移植の上、発注などの日常業務の使い勝手が改善しただけでなく、新たにフロアマップを利用した商品検索、および店舗内、店舗と本部間のコミュニケーションを円滑に行うタスク管理機能を実現しました。
日本TCS をパートナーとして選んだのは、プロジェクトに対して責任感・熱意を持って対応してくれる“人材” がいたことも大きな理由の一つ
濱野 崇 氏
執行役員 販売促進部長
(プロジェクト責任者)
――『NAVI-KO』開発プロジェクト立ち上げの背景や目的をお聞かせください。
濱野:日本では少子高齢化に伴い、労働力の確保が難しくなっていますが、当社でも従業員の高齢化が進み、店舗運営のハードルは上がっています。さらに、デジタルの普及により、商品情報を調べてからお買い物に来られる方が増え、これまで以上に正確で丁寧な接客が求められるようになりました。こうした環境変化の中、当社は第3次中期経営計画「~ずっと大好きや!!コーナン~これからもあなたにぴったり」を掲げ、店舗業務の改革などに取り組んでいます。その施策の一つがスマホハンディアプリの開発です。
――プロジェクト立ち上げに当たって、どのようなビジネス課題がありましたか。
濱野:1点目はお客さまからのお問い合わせへの正確な対応です。お問い合わせの約6割が商品の陳列場所や取り扱いの有無で、従業員の習熟度によって対応品質にばらつきがありました。2点目はタスクの管理。店舗業務のタスクの総量や割り当て、進捗の可視化や共有ができていませんでした。3点目は従業員同士のコミュニケーション。業務指示や引き継ぎなどは、直接の会話や紙のメモなどで対応していたことから、効率化を図る上でスムーズな情報伝達・共有が大きな課題になっていました。
日本TCSの担当者より
日本TCSは、こうした課題解決のために当社のグローバル先進事例や、小売業界の知見や実績を生かした提案をしました。その結果、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)のグローバルリソースを活用した、日本とグローバルの“ハイブリッド体制”で、「必要な機能を最短期間でリリースしたい」というご要望にお応えするための“アジャイル開発”が採用されました。
――アジャイル採用の決め手、苦労された点をお聞かせください。
濱野:実は当社がアジャイル開発を採用したのは、今回のプロジェクトが初めてでした。アジャイル開発の知見も知識もない中でしたが、日本TCSから丁寧なご提案を頂いた結果、当社の志向する進め方に適していると感じ、先も見据えて採用を決定しました。継続的にサービスレベルを維持向上し、お客さまの情報提供に対する期待に応えるには、アプリを常にアップデートしていく必要がありました。また、加速するデジタル技術の普及に素早く対応し続けるという点からも、端末はスマートフォン、システム開発はアジャイルがベストだと判断しました。大変ではあるものの、日本TCSの知見と実績があればできるだろうと信じて始動。プロジェクトが進行するにつれて、当社のニーズを的確にくみ取って形にする日本TCSの対応力を実感しました。アジャイル開発だからこその、仕様検討時の意思決定のスピード感など、慣れない進行に苦労があったのは事実です。しかし、思う通りに形になっていくにつれメンバーのモチベーションも高まり、結果的に従業員からの評価も高いものが出来上がり、感謝しています。
亀井:今回のプロジェクトは、“これからのあるべき業務をつくるための仕組み”という視点で新しい機能などを考えていくことは決まっていたものの、詳細まではまとまり切れていない中でのスタートでした。だからこそ、小さくつくって大きく育てるアジャイルがマッチすると判断しました。一方で、新規アプリだけでなく、連携する既存の社内システムの開発も必要で、こちらはウォーターフォールでの開発のため、当初は難しさを感じることもありました。
――ハイブリッド体制については、どのように感じましたか。
亀井:われわれと直接対面するのは日本のメンバーの方々でしたので、全く意識することはありませんでした。言い換えれば、違和感やデメリットを感じることなくグローバルの知見を得られたということですね。グローバルの事例を背景にしていることで、高い視点からのアドバイスや提案がしてもらえているという実感はありました。
「これがアジャイルか」と効果を実感したのは、打ち合わせの翌週には 実際に動くモックアップ画面が見られ、さらにいろいろなアイデアが出てくるという好循環
亀井 学 氏
システム企画部 副部長
(プロジェクトマネージャー)
――今回のプロジェクトで最も困難だった場面と、それをどう克服したかをお聞かせください。
宮尾:個人的には、当初、要件に組み込まれていなかった伝票の電子化を実現するため、要件を取捨選択し、優先順位を付け、具体的に整理していく工程が困難でした。アプリの操作性やデザインなどのブラッシュアップにも苦労しましたね。日本TCSからは、作業のボリューム感などを開発目線で具体的な工数として提示してもらい、ボリューム感的に難しい場合でも、解決策を提案してくれました。おかげで、営業職の私でも、リリーススケジュールのイメージを持って社内外調整ができました。アプリはモックアップ画面などを使い意思疎通を図り、実装イメージの擦り合わせができたこともあり、ほぼ予定通りにリリースできました。当社と日本TCSが同じ方向を向いて、協力していくという意味でも、アジャイルはメリットが大きいと感じました。
西岡:私はプロジェクト終盤から店舗での運用を担当しましたので、今の話はよく分かります。『NAVI-KO』は、段階的に機能を増やしていく形で店舗に展開しました。導入当初は限られた機能しか使えず、従来のハンディターミナルも必要なことから、積極的に使われる方と、2台も持ちたくないという両極に分かれましたが、機能の追加をしていく中で、徐々に理解度や信頼度が上がっていったと感じます。
日本TCSの担当者より
日本TCSは、プロジェクトを進める上で、まずはアジャイルを理解していただくことが重要と認識し、そのためにかなりの時間をかけました。進捗レポートは、極力客観性のある定量的な数値を用い、品質面でもウォーターフォール並みに細かくテストプロセスを設定して進めました。
方向転換可能な開発スタイルのおかげで、「こういう機能もあったらいいよね」を柔軟に形にでき、実際に現場で使われていることがうれしい
宮尾 ゆかり 氏
物流部 流通企画グループグループマネージャー
(プロダクトオーナー/プロジェクト開始から終盤まで)
タスクをこなすとポイント付与されるゲーム性のある仕組みの提案などにより、従業員のモチベーションアップにも貢献
西岡 竜希 氏
営業企画推進部グループマネージャー
(プロダクトオーナー/終盤から本稼働および稼働後のユーザーフォロー)
――スケジュールやコストを順守し、予定通りにリリースできた要因はどこにあると感じていますか。
亀井:TCSのグローバルメンバーも含め、当社の要望をよく理解してくれたことで、大きなブレもなく進めることができたと感じています。
宮尾:同感ですね。「なぜこうしたいのか」という根幹の部分を理解されていた。徹底したコミュニケーションで互いに理解し合えたことが大きかったと思います。
西岡:開発段階で、要件に対して細かなコミュニケーションが取れていたのだろうと感じました。引き継いだ後も、「そういう要件ならこっちの画面で、こういう操作性で」と、素早い提案を受けることが多くありました。
――システム導入により、ビジネスにどのような効果をもたらしていますか。
濱野:店舗において決められた作業を100%実行する完全作業や、業務の確認などは、目に見えてできるようになっています。問い合わせに対しても、商品検索機能が大いに利用され、従業員からは「これがないともう接客できない」という声も届いています。また、『NAVI-KO』を導入したグループ会社からも、高く評価されています。直感的に使えて業務が劇的に変わったと、効果がグループ全体として得られていると思います。
西岡:『NAVI-KO』での2023年9月の商品検索数は292万件。仮に検索機能がなく、そのうちの10%が在庫確認のために移動時間が発生したとすると、約2万4千時間もの削減につながります。翌月は検索数がさらに増えて310万件。「業務が楽になる」と実感する従業員が増えることで、さまざまな機能の利用が拡大するでしょう。また、アプリ上で従業員が商品レビューを投稿するとポイントがもらえるといった仕組みも取り入れています。今後、タスクをこなすとポイントが入るという機能もスタートしますので、業務に対するモチベーションがますますアップすると期待しています。
――日本TCSをパートナーとして選定したポイントをお聞かせいただけますか。
亀井:選定ポイントは、私たちがやりたいことを実現するための知見や実績を持ち合わせ、どんな相談に対してもワンストップで対応できること。また、グローバルでの豊富な経験をこのプロジェクトにも生かしていただけるだろうという期待ですね。小売業の考え方も深く理解されていて、こちらのイメージをよく分かっていただけるという部分も大きかったと思います。
濱野:パートナー選定時に、日本TCSの担当者と直接会話する機会がありました。その時に感じた、プロジェクトに対する責任感や熱意を持って対応してくれそうだという印象の通り、日本TCSの“人材”も選定の大きな理由の一つでした。
――今後のプロジェクトの展開や、日本TCSへの期待をお聞かせください。
宮尾:私自身は、現在は物流部門に異動し『NAVI-KO』によってお店がどう変わっているのか直接実感できるポジションでなくなってしまいましたが、異動先でも日本TCSと協力して何かできないかと考えています。
西岡:今後も、現場の「こういったものを形にしたい」といったさまざまな要望に対して、当社の競争力につながるような支援や新しい取り組みを提案してもらえることを期待しています。亀井:今回、クラウドのAWSサーバレスアーキテクチャを採用し、リソースの追加も非常に容易で柔軟にできるようになりました。今までの当社では考えられなかった手法を採用していただいたことも非常に新鮮でした。そういう先進企業で使われている技術を、これからもどんどん持ち込んでいただきたいと期待しています。
濱野:今回開発したシステムは、現場のニーズや課題を吸収しながら、変化する業務に柔軟に対応し、進化し続けていかなければなりません。日本TCSには引き続き、当社の大事なパートナーとしてサポートをお願いしていきたい。また今後の最新技術の活用について。現在生成AIがビジネスに大きなインパクトを与えようとしています。こうした目まぐるしく進歩する最新技術を、当社がどのように取り込み成長していくかという点についても相談させていただきたい。グローバルの知見と情報を持つ日本TCSは頼もしい限りです。
日本TCSの担当者より
当社には、顧客体験(CX)強化を支援するさまざまなサービスやノウハウがあります。例えば、当社のTCS Interactiveでは、サービスデザインから開発、運用までのエンド・ツー・エンドのサービスを提供しています。こうしたサービスを活用いただくことで、お客さまが求める最適化されたレコメンデーションやパーソナライズされた体験を実現し、コーナン商事様のさらなるCX向上に貢献していきたいと考えています。その他にも、お話のあった生成AIの業務活用など、グローバルおよび日本市場での豊富な経験、知見、技術力を生かし、コーナン商事様のビジネス発展を全力でご支援していきます。
※掲載内容は2023年12月時点のものです