日産自動車株式会社
長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」のもと、カーボンニュートラルとゼロ・エミッション車の実現に取り組む日産自動車株式会社(以下、日産)。同社はビッグデータ分析基盤にアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し、プロジェクトの中期より日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本TCS)の支援を受けて日産全社共通のデータ分析基盤サービスを構築しました。リリースから約 3 年間で、このサービスを活用したプロジェクトは全社で 229 に達し、データ活用の民主化が進んでいます
お話を伺った方
デジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部
部長 馬場 昭典 氏
主担 中村 光晴 氏
主担 吉田 高明 氏
日産自動車株式会社
業種:オートモーティブ
国名:日本
従業員数:23,525名(単独) 131,719名(連結)
ウェブサイト:https://www.nissan-global.com/JP/
企業概要:「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」を企業パーパスに、グローバルで革新的なクルマやサービスを提供。電動化推進を長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の中核に据え、2030年度までに19車種のEVを含む27車種の電動車を導入し、ニッサン、インフィニティの両ブランドをあわせてグローバルに電動車のモデルミックスを55%以上とすることを目指す。
ビジネスの課題
2023 年をゴールとした事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を支える中期デジタル戦略「NISSAN DIGITAL NEXT」を展開する日産。NISSAN DIGITAL NEXT の柱の一つであるドライブイノベーションを支えているのが AWS をベースに構築し、2021 年より本格稼働を開始したデータ分析基盤サービスで、そのDWH には、開発、製造、サプライチェーン、セールスなどの、自動車に関するありとあらゆるデータが蓄積され、全社のプロジェクトで活用されています。
日産が新たな統合データ分析基盤を構築した背景には、データとそれを活用する環境の早期かつ効率的な提供にありました。同社では 2015 年にオンプレミスの共通データ基盤を構築し、全社に向けて提供を開始しました。しかし、利用部門からのリクエストに迅速に対応できないという課題がありました。「データ基盤は必要リソースの先読みがしづらく、オンプレミスの場合、環境の準備や増強に 3 か月から 1 年はかかります。構築後も負荷が高い処理を実行するとトラブルが発生することも多く、インフラとミドルウェアの運用に頭を痛めていました」と語るのはデジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部 部長の馬場昭典氏です。
また、当時のエンタープライズデータサービス部はインフラ管理を主たる業務としていたため、データのサイロ化やブラックボックス化が進んでいました。そこで、日産では2018年から次期データ基盤の構想検討を始め、2020年からスタートした中期デジタル戦略「NISSAN DIGITAL NEXT」の中で、自動車のライフサイクルに関するすべてのデータをエンタープライズデータサービス部が統合管理するプラットフォームに集約する方針を打ち出し、誰でも簡単・安全に使えるデータベース基盤を提供するプロジェクトを立ち上げました。立ち上げ当初は車両に関わるデータを中心としていましたが、その後、データの範囲を、顧客、部品、車両走行情報、EV 用バッテリーなどにも拡大しています。
ソリューション
データ分析基盤サービスの構築に際しては、日産グループの共通クラウド基盤に定められている AWS を採用しました。デジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部 主担の吉田高明氏は「情報量が豊富で、機動力が高く、使いやすいというのが AWS の第一印象です。私たちは 2019 年からデータウェアハウス(DWH)としてクラウドベースの Snowflake を使っているため、Snowflake が AWSで利用でき、AWS との連携性に優れていたこともポイントになりました」と語ります。
同社が構築した データ分析基盤は、大きく 3 つの層で構成されています。1 層目はソースのデータを蓄積するデータレイクで、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)を採用しています。2 層目は Snowflake による DWH で、内部は RAW データ、成形加工データ、ユーザー加工用のデータマートの 3 つに分けています。3層目はデータ活用ツールで、機械学習フレームワークの Amazon SageMaker や、Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS)を活用した ETL ジョブの実行基盤を整備し、BI ツールとして Amazon QuickSight を採用しています。
「エンタープライズデータサービス部にとって、AWSのマネージドサービスをフルに使ったプロジェクトは初めてのことで、Snowflakeとの接続について試行錯誤しながら取り組んだことで、ノウハウを蓄積することができました」(吉田氏)
データ基盤の構築と並行してデータの整備も進め、データカタログの作成、データ利用ルールや利用範囲の決定、データアクセスに関する社内プロセスの制定などを行いました。デジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部 主担の中村光晴氏は「ゼロの状態からポリシーを決めていく難しさと、エンタープライズレベルのデータガバナンス設定の難しさ、さらに当社のオフショア開発拠点である Nissan Digital India の開発メンバーとのコミュニケーションの難しさがありました」と振り返ります。
インフラ構築全般とデータ整備の一部は日本TCS が支援し、サービスリリース後の運用・保守も同社が担当しています。日本TCSの森本大樹氏は「新しいサービスの立ち上げには、幅広い知識とノウハウが求められるため、オンサイトで参画した当社のメンバーも含め、バイリンガルで幅広いスキルセットを持つ要員をアサインしました」と語ります。
日本TCSの支援体制について馬場氏は「インフラやデータ整備に関して、end-to-end のカバレッジを持つエンジニアをトータルパッケージで提案していただけたことで、安定的で持続可能なチームへ成長を遂げました」と評価します。
続きは「アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社様」のページでご覧いただけます。
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