パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
世界6地域をつなぐPanasonicグローバルバックボーンネットワークを刷新
地域間のデータ連携強化など、グループの事業競争力強化に貢献
パナソニックグループのIT戦略を長年にわたって支え続けるパナソニック インフォメーションシステムズ株式会社(以下、パナソニックIS)。同社は、近年におけるIT 課題の1つとなっていたグローバルネットワークの刷新に際して、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(以下、日本TCS)に支援を要請し、仮想化技術を用いた新たなグローバルバックボーン(新GBB)を構築しました。これにより、共通化されたハイパースケーラー接続による安定したクラウド接続、地域間通信、広帯域化によるデータ連携の強化やセキュリティの厳格化が実現するなど、グループの事業競争力強化につながるさまざまな成果を獲得しています。
課題 | 導入後 |
---|---|
事業変化に即応できるITインフラ(ネットワーク)の提供 | 仮想化技術を活用したネットワーク構築のリードタイム短縮と変化対応力強化 |
アプリケーションのマルチクラウド化に対応したネットワークへの移行 | 共通のハイパースケーラー接続による最適なクラウド接続・地域間通信の実現 |
セキュリティのさらなる強化で安心・安全なネットワーク利用を実現 | グローバルでハイリスク通信遮断実施と不正通信の早期検知・遮断でセキュリティのさらなる強化 |
背景・課題
創業以来、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を事業理念に掲げるパナソニックグループでは、2021年5月から独自のDX戦略として「PX(Panasonic Transformation)」を推進しています。このITにとどまらないグループ全体の経営基盤の強化に向けた取り組みをデジタルの知見で支え、大きな貢献を果たしているのがパナソニックISです。
PXの推進で求められるITインフラについて、インフラソリューション本部 ネットワークサービス事業部 ネットワーク部 部長の福永猛氏は次のように話します。
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
インフラソリューション本部
ネットワークサービス事業部
ネットワーク部 部長
福永 猛 氏
「PXにおけるIT戦略実行の上では、レガシーインフラのモダナイズとクラウド活用の高度化が不可欠です。パナソニックグループでは、すべての事業において地域間・拠点間の安定したデータ連携が求められます。クラウドサービスの利用が拡大してデータ量も増加する中、私たちのグローバルネットワークもこうした変化に追随していく必要があります。また、セキュリティにおいても従来の境界型防御だけでは限界があり、ゼロトラストへの移行が避けられない状況です」
しかし、これまでグローバルの6つの地域が独立して運用してきたネットワークは、地域ごとにハイパースケーラー接続が異なり、データ連携においても閉域網接続ではボトルネックが発生するなど、いくつもの課題がありました。
「そこで、これまでのオンプレミス環境とクラウド活用のハイブリッド環境を前提としたネットワークインフラの構築を目指して、仮想化技術を用いてすべての地域を共通のアーキテクチャでつなぐ新たなグローバルバックボーン(新GBB)への移行を決断しました」(福永氏)
取り組み
新GBBの構築に向けて、パナソニックISはグローバルプロジェクトで豊富な実績を持ち、短期間で実現性の高いプランを提示した日本TCSをパートナーに指名しました。その理由について、福永氏は次のように説明します。
「評価のポイントは、最初に支援いただいたキャリア選定のRFI作成で高い成果が得られたことです。新GBBを構築するベンダーの選定においても、クラウド、セキュリティ、仮想化技術といった広範なテクノロジーの知見、またグローバルネットワークの設計・導入の高度なケイパビリティを備えた日本TCSは、私たちが求める要件を十分に満たしていました」(福永氏)
“クラウド、セキュリティ、仮想化技術といった広範なテクノロジーの知見、グローバルネットワークの設計・導入の高度なケイパビリティなど、日本TCSは私たちが求めるパートナーの要件を十分に満たしていました。
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 福永 猛 氏
2022年4月にスタートしたプロジェクトでは、まず日本とEUでPoC(概念実証)を実施し、日本で先行稼働を開始。その後は、中国、欧州(ドイツ)、米州、ISAMEA(インド、南アジア、中東、アフリカ)、APAC(シンガポール)でネットワーク基盤の切り替えを順次行い、2024年3月末までに完了しています。
PoCのフェーズでは、欧州をモデルケースとして多くの課題を抽出して解決した上で、移行手順をテンプレート化。他の地域へのロールアウトでは、日本TCSも交えたチームで地域の状況を考慮した展開を進めていきました。
ISAMEAの切り替えでは、スケジュールの延長寸前まで追い込まれる状況も発生しましたが、プロジェクトメンバーのチームワークで何とか乗り切ることができたといいます。インフラソリューション本部 ネットワークサービス事業部 ネットワーク部 グローバルネットワークチーム チームリーダーの西山隆氏は「ISAMEA地域のまとめ役だったインドの現地法人に十分な体制がなかったことが一因ではありますが、日本TCSさんの支援でこうした点を補えたことは成功要因の1つです」と振り返ります。
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
インフラソリューション本部
ネットワークサービス事業部 ネットワーク部
グローバルネットワークチーム チームリーダー
西山 隆 氏
効果
構想段階におけるアセスメントおよびキャリア選定の段階における日本TCSの支援について、福永氏は次のように評価します。
「構想段階では新GBBに最適なアーキテクチャを提案いただいたほか、キャリア選定のRFI作成でもパナソニック視点でわかりやすい資料をまとめていただけたことで、手戻りも少なく進めることができました」
これに対して、日本TCSのコンサルタントである竹内修は「パナソニックIS様から明確な指針、方向性を示していただけたことで、プロジェクトの正しい道筋を見いだすことができました」と話します。
またPoCやロールアウトの支援についても、西山氏は「短期間のPoCで多くの課題を抽出し、移行手順をテンプレート化できたことには大きな意味がありました。ロールアウトでは的確なコミュニケーションで地域の担当者から情報を引き出し、6地域すべての切り替えにおいて障害を発生させることなく安全・確実に移行ができました。これはTCSさん、各地域を交えた綿密な移行計画策定と事前テスト、切替前レビュー実施など周到な準備があってこそだと思います」と評価しています。
この実行フェーズのプロジェクトマネージャーである日本TCSの富永洋志からは「休日や夜間が多いネットワークの切り替え作業でも、各地域で多大なご協力をいただき、無事に移行することができました」という声が寄せられています。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
コグニティブ・ビジネス・オペレーション統括本部
プロジェクトマネージャー
富永 洋志
今後の展望
2024年5月末現在、新GBBは旧基盤から新基盤への切り替え、旧基盤の撤収が完了した段階ですが、すでに具体的な成果が生まれ始めています。
「従来と比較してバックボーンの総帯域が3.2倍に拡張されたことで、地域をまたいだサプライチェーンでの膨大なデータ連携は強化されています。また、仮想化によってハードウェアを調達する必要がなくなり、4~5カ月を要していたネットワーク新設のリードタイムは1カ月程度に短縮される見込みです」(西山氏)
セキュリティにおいても、地域拠点と新GBBの接続にファイアウォール、IDS/IPSを実装し、ハイリスク通信の遮断実施やシグネチャーによる不正通信の検知・遮断とさらには各地域でセキュリティインシデント発生時の緊急全遮断ができるようになりました。
今後の継続課題としては、コストの最適化と運用の効率化が挙げられます。この点については、TCSのインドのオフショアリソースを活用して一元的な運用体制へ移行し、合理化を進めていく考えです。
さらに、一部の地域で運用しているSD-WANネットワークの運用集約のほか、ITSMツールの活用やプロセス統合を通じて運用品質のさらなる強化にも取り組んでいく計画です。
近い将来においても「クラウド活用の高度化、自動化・AIなどの最新テクノロジーによって、パナソニックグループの事業競争力の強化にますます貢献していきたい」と展望を語る福永氏。こうしたパナソニックISの取り組みにおいて、世界最先端のデジタルサービスの知見を持つ日本TCSとのパートナーシップは、ますます大きな役割を果たしていくはずです。
設立:1999年
本社所在地 :大阪府大阪市/東京都中央区
資本金:10億4,000万円
売上高:1,363億600万円(2024年3月)
事業内容:情報サービス(パナソニックグループのIT戦略をグローバルで支援)
※本事例の内容は2024年7月現在のものです。
※記載されている会社名・サービス名・製品名などは、各社の商標または登録商標です。