エンドカスタマーの要求の高まり、規制への対応、バリューチェーン全体の効率化など、製造企業は明日のニーズに対応すべく自らを変革するという大きな課題に直面しています。 バリューチェーンのあらゆる場面において、変化が求められています。
カスタマーエクスペリエンスのパーソナライゼーションが進み、顧客の期待の変化に寄り沿ったマスカスタマイゼーションが要求されるでしょう。 この要求に応えるには、アジャイルな製品開発のプロセスと、より自動化された製造プロセスが必要となります。
バリューチェーン全体においても、より緊密な連携と変化が求められます。 次のようなパラダイム・シフトに対応していかねばなりません。
コネクテッド デジタル エンタープライズがバリューチェーンを変革する
デジタル技術の進歩により、世界は「デジタルファクトリー」「インダストリー4.0」「スマートマニュファクチャリング」といった構想の実現に近づきつつあります。 一方、多くの企業において、バリューチェーン上にサイロ化したビジネス機能が点在し、意図せぬ障壁となって効率を妨げるという問題も抱えています。 シングルソースデータの取り込みは理想通りに実現できてはおらず、この不完全な状態による手戻りや再入力、エラー、コスト増が発生しています。 つまり、リソースやサプライチェーンの最適化に手付かずの領域が残されている上、技術的な生産性の向上やオペレーションの効率化も依然として対応すべき主要課題であるのが現状なのです。 シングルソースデータが開発の場に届き、製品の改良に使用されることは、ほとんどありません。 これらの課題の解決策として期待されるデジタルですが、実は技術的な点から言えば、デジタル自体は新しいものではありません。 日本でも、設計や3Dビュー、店舗の自動化など、すでに多くの企業がデジタル技術を取り入れています。 注目すべきは、入手したデジタル情報をバリューチェーン上でどのように判断材料として活かせるかという点にあります。
もはや製造過程における卓越性だけを意識していればよい時代ではなくなっています。 デジタルを活用できれば、製品に対する購買層のあらゆる反応をシステムにフィードバックさせて、エンジニアリングや製品の創造、製造、さらにはサービスの変革にまで活かせる、「クローズド ループ」システムを構築できるようになります。 実際に、TCSではある自動車メーカーと協力して、車の診断情報をクラウド上に収集・蓄積し、アナリティクスを行うプロジェクトに挑戦しました。 その結果、ブラジルにある幾つかの工場における興味深い結果が得られ、設計とエンジンコントロールユニットの両面で製品の品質向上につなげられました。 このように情報を収集し、つなぎ、バリューチェーンを見直すことで、まったく新しい可能性が生まれるのです。 それこそ、まさにインダストリアルインターネットが後押しし、実現しようとしている世界です。 これまで重視されてきた製造の卓越性だけにとらわれず、周囲にも目を向けてみてください。 左端に製品の創造が、右端にサービスパフォーマンスがある世界を一望できることに気付くでしょう。
バリューチェーンの端から端までをつなぐことを考えるべきです。 下図は、その理想形というべきコネクテッド デジタル エンタープライズとそれを構成する主要な要素をまとめたものです。 プラットフォームを中心とするITによって支えられたコネクテッドなバリューチェーンなら、前述の課題に対応できます。 設計から製造エンジニアリング、製品の実現、サービスまでを結び、フィードバックも可能にするデジタルスレッドを通すのです。 こうしたデジタルスレッドにより、サイクルタイムの短縮や「First Time Right(最初から適切なやり方で進めること)」が一層可能になります。
さらに、クローズド ループシステムは、リアルタイムの情報をシームレスに提供することで、システム全体の効率を向上させる意思決定を可能にします。 また、製品ライフサイクル上の必至の課題である「変革」については、デジタルディスラプション(デジタルによる創造的破壊)といったバリューチェーンの変革が必要です。 デジタルエンタープライズは情報の力を活用します。 サイロ化したシステムを解体し、静的で動きの遅いデータをシームレスでリアルタイム、インテリジェントで反応の早い情報へと変え、活発なシステムにします。
これまで解説したようにデジタルは、企業が自社の製品やプロセス、サービスを新たに「想造」するのを助けます。 コネクテッド デジタル エンタープライズを目指すには、単に機械から情報を収集するだけでなく、リアルタイムの情報に基づいてシームレスに決定を下し、全体の効率向上を可能にするようなソリューシンが必要です。 そうしたソリューションはクローズド ループのシステムの中でバリューチェーンをリーンで効果的で反応の早いものにすることで、総体的な変革をもたらします。 こうした取り組みにより、製品性能の向上、サプライチェーンのリアルタイムの可視化、積極的なエネルギー管理、ダウンタイムの大幅な低減、より効率的な保守の実現といった効果が期待できます。
※掲載内容は2016年8月時点のものです。