ビッグデータ活用は、長らくビジネスの重要な課題と言われ続けています。実際の活用に際しては、分析手法以外にも様々な観点からの検討が必要となります。
TCSの有識者が知見や経験を元に、
という三つの観点からビッグデータ活用に関する考えを紹介していきます。
今回は、第1弾として、利用者視点の分析アプリ利用について、「技術革新とコンシューマー化が著しく進んでいる分析アプリのインターフェースに没入型分析を如何に活用するか」がテーマです。
分析アプリケーションにむかって「過去3四半期の売上はどうでしたか?」と尋ねるだけで、機械があなたの言葉の文脈を学習し、複雑な図表の代わりにあなたが欲しい情報だけを提示してくれる、そんな時代が来ようとしています。
実際にはその段階に到達していませんが、データを起点に動くデジタル化が進んだ現代の経済において、使いやすい優れたユーザーエクスペリエンス(UX)へのニーズはますます高まっています。一方で、米国では分析担当者の1/3は、BIツールのインターフェースを複雑で難しいと評価しています。
しかし、IA(Immersive Analytics : 没入型分析)テクノロジーが進化すれば、こういった問題は解決されます。Amazon Echoがショッピングを新鮮かつ利便性に富んだ体験に変革したように、自然言語解析技術が進歩することで、ユーザーが入力した内容の意味を理解・推測できるようになります。ユーザーはBIツールとの対話をストレスなく行うようになります。実際にIAテクノロジーを使用した、プラットフォームに依存しないBIツールの需要は高く、企業の経営幹部層の47%が音声で起動する仮想アシスタントによる分析に関心をよせています。
IAインターフェースが実現すればVR(Virtual Reality : 仮想現実)やMR(Mixed Reality : 複合現実)により、ユーザーはいつでもどこでも、音声・テキスト・ジェスチャーなど好きな手段でアプリケーションを操作できるようになります。VRやMRを活用した直感的なインターフェースにより、生産性向上を達成するだけでなく、大規模なトレーニングも不要となるため、コストや時間も削減できます。IAはインターフェースとして非常に有用ですが、有効に活用するにはエンドユーザー、事業運営、全社的なITシステム環境など様々な観点から、IAを理解することが重要です。さらに標準インターフェースとして、セキュリティ対策を必要最低限のコストで実装可能であることが求められます。
IAを導入するためにはまず、IAインターフェースと既存システムを統合する際、どの部分に変更の必要が生じるのか、また拡張が必要なアプリケーションを特定し評価することが肝要です。システムがIAインターフェースから情報を受け取り、アプリケーションが理解できる情報に変換できるかをテストし、検証することが必要です。これは、ユーザーが音声やジェスチャーといった複数のモードでシステムにアクセスできるようにするための重要なプロセスです。ユーザーはテキストベースのChatBotから音声やジェスチャーでの操作に切り替えることができるようになります。
総合的なIA実装のロードマップを作成するにあたっては、自社開発を行って競争力の源とするか、市場サービスを利用するのかという方向性を固める必要があります。
考慮すべき点としては、既存のITインフラがIAテクノロジーに対応できるか、またそのためのスキルセットを持つ要員を確保できるかに加えて、潜在的なROIやシステムの継続的な改善なども考慮しなければなりません。
VRやARなどの技術を応用した没入型分析は、難解だったアナリティクスソリューションを、より直感的に活用できるようにしてくれます。トレーニングも最小限で、生産性向上などのメリットが見込めるため企業の注目は高まっています。しかし、導入するには既存システムへの影響をきちんと評価しなければなりません。
投資対効果を考えながら導入までのロードマップを策定しなければなりません。
次回は、「ビッグデータのビジネス活用」をアナリティクスの観点から紹介します。
※掲載内容は2019年3月時点のものです。