昨今、さまざまな企業同士が連携・協業しながらお互いの収益に貢献し合える“エコシステム”は、ビジネス上での大切な要素となっています。テクノロジーの目覚ましい発展や、提供するサービスやコンテンツの多様化により、企業が単独で競争に勝つことは難しくなっています。いかにお互いを補完し、強化し合えるエコシステムを構築するかが、生き残りを懸けた最重要課題です。タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)では、多様なパートナー企業と有機的な関係を構築する専門組織“パートナーエコシステム&アライアンス”を組成し、この課題に取り組んでいます。
TCSのパートナーエコシステム&アライアンスのグローバルヘッドであるディナナス コルカールと、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)のアライアンスユニットヘッドの山縣 真樹がTCSにおけるパートナーエコシステムへの取り組みについて、語ります。
企業が抱えるビジネス上の課題は年々複雑化し、今や単独の技術だけで解決できることはほとんどありません。クラウドやサイバーセキュリティー、プロセスマイニング、自動化技術など、さまざまな強みを持つ企業が連携するエコシステムを構築し、豊富なユースケースから得られるイノベーションやグローバルなケイパビリティーを駆使して、課題解決への最適解を求めることが不可欠です。
もちろん、ITサービス企業として幅広いサービスを持つTCSにもこれは当てはまります。TCS単独で達成できることはまずありません。お客さまのビジネス課題に最適なソリューションを提供するためには、さまざまなパートナー企業の強みと、各社が構築しているエコシステムを活用した協働が重要です。TCSの“パートナーエコシステム&アライアンス”は、そのようなパートナーシップの構築・実現に注力しています。
タタコンサルタンシーサービシズ
パートナーエコシステム&アライアンス
シニアバイスプレジデント&グローバルヘッド
ディナナス コルカール
TCSでは、20年ほど前からパートナーエコシステムの活用に積極的に取り組んできましたが、2022年には、その取り組みをさらに加速させるため、専門組織を組成しました。それが、“パートナーエコシステム&アライアンス”です。この組織では、エコシステムパートナーの技術やソリューションの最新情報をキャッチアップするとともに、TCSに関する情報も定期的に共有し、相互の理解を深めています。
さらに世界各地のパートナーとのミーティングやイベントの共催も積極的に推進。TCSの強みに対する認知度を高め、関係性を深めることで、エコシステムの強化・高度化に注力しています。専属のチームが、使用技術や地域、業界、新規技術の開発、ガバナンスとコンプライアンスといった各分野の専門的な知見を集約し、お客さまの課題に対して最適解を導き出しています。
TCSが定期的に追跡しているパートナー企業は約1,200社。そのうち約400社とは現在パートナー契約を結び、さらにその約80社を戦略的パートナーと位置付けています。Microsoft、AWS、SAPやSalesforceといった世界最大級のソリューションプロバイダー約10社とは、トップパートナーとして日常的な協業体制を確立。さらに、将来的にその仲間入りをするであろうと期待される“エマージングパートナー”に対しては、各社のビジネス推進に協力・投資することで関係を深めています。これも“パートナーエコシステム&アライアンス”の重要な機能です。
私はTCSの“パートナーエコシステム&アライアンス”のグローバルヘッドに就任以来、世界各地でさまざまなパートナーと交流してきました。米国をはじめ、英国、欧州、中東、インド、オーストラリア、シンガポール、そして日本にも多くのパートナーがいます。どの地域においても、パートナーエコシステムに不可欠なのはコラボレーションです。複数のテクノロジーだけでなく、時には業界の知見も組み合わせた解決が求められます。
例えば、お客さまがクラウドへの移行を望んでいるとします。クラウドソリューションを提供するプロバイダーだけでなく、データ分析、サイバーセキュリティー、自動化ツールなどさまざまな分野に強みがある企業が連携し、そのエコシステムを活用します。また、建設業界や銀行業界など特定業界における専門家の協力が必要な場合もあります。こうした協力により、お客さまにとって最適な決定を下すことができます。
そしてコラボレーションを意味あるものにするには、ギブ&テイクが最も重要な要素です。貢献しなければ、何も得ることはできません。それがパートナービジネスの基本であり、TCSを取り巻く多くの人々と、正しくギブ&テイクの関係を構築することが、私が率いる組織の大命題となっています。イノベーション、ベストプラクティス、そして新しいスタンダードづくりの過程において、パートナーに対して必要なのは、お互いを理解するオープン性です。テクノロジーの変化のスピードが非常に速いので、お客さまが抱える課題も明日には変わるかもしれず、そうした課題を解決するための新たなアプローチを必要とするかもしれません。そうした事態に対処するためにも、エコシステムには常に学びとオープン性が必要なのです。
日本においても、パートナーとのこうした関係をより強固にしたいと考えています。TCSは日本のお客さまに対する支援にも注力しており、日本のマーケットに提供できる独自のイノベーションを多数用意しています。また、インドには日本企業専用のデリバリーセンター(Japan-centric Delivery Center:JDC)も開設しています。世界中のエコシステムと連動することで、日本のお客さまにさらなる価値を提供できることでしょう。世界中のパートナーとのエコシステムを活用して、日本のパートナーと共に、日本のお客さまに価値を提供したいと強く思っています。そのためにも“パートナーエコシステム&アライアンス”の役割が重要になってくるのです。TCSのパートナーエコシステム&アライアンスは、グローバル・パートナーシップ協定などを全て管理しており、パートナーに関する最新の情報もそろっています。そうした観点からも日本のマーケットを支援する用意が整っています。日本にはどういったお客さまのニーズや課題があり、今後どういったパートナーとつながっていくべきか。パートナーのスキルとTCSのオファリングを組み合わせ、グローバルチームが日本に貢献できる可能性がある分野を既に幾つか特定しています。
また、パートナーエコシステムをさらに拡大していくためには、パートナーの先のパートナーも巻き込むことが、今後ますます必要となってくるでしょう。日本のお客さまとパートナーの皆さまには、当社が長期的な関係を重視し、良いときも悪いときも共に歩んでいくパートナーであることを理解していただくことがとても大切だと思っています。それこそが私たちのパーパス“イノベーションと集合知でよりよい未来をつくる”に直結する思いであり、お客さま、パートナーと共に成長できる源泉だと考えています。より多くの成功体験を一緒につくっていきましょう。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
アライアンスユニットヘッド
山縣 真樹
私が率いるアライアンスユニットは、TCSとパートナーをつなぐハブとして相互理解を深めることに注力しています。日本TCSのバリューを最大限発揮するには、お客さまの課題を把握し、それに対応できるパートナーに対する理解がポイントだと思っています。
パートナーには日本TCSの注力領域、方針、強みを伝えることも必要です。そうした相互理解こそが、パートナーエコシステムのベースになるからです。そのため、経営層同士の定期的な面談、勉強会やワークショップ開催、共同ビジネスプランの策定を通じて、パートナーとの連携強化に取り組んでいます。
日本TCSの最も大きな強みは、グローバルなTCSのパートナーエコシステムを活用して、最適なソリューションを提供できることです。グローバルレベルでのパートナー契約やサポート体制が整った最新のサービスが数多くそろっており、私たちにご相談いただければ、日本にはまだ持ち込まれていない新しいテクノロジーやソリューションであっても、責任を持って提供できます。パートナーのサポート拠点が日本にあるかどうかに関係なくサポートすることが可能です。
このように私たちは、日本にこだわらず、グローバルで一番いいものを、最適な組み合わせでソリューション化して提供できます。ローカルで完結するものしか対応できなかったり、各ベンダーの自社製品に限定されてしまうといった制約がないことが、TCSの大きな強みです。しかし、お客さまにもパートナーにもそうした強みを十分に伝え切れていないといった課題を感じています。パートナーのテクノロジーやソリューションの強みを理解し、パートナーと一緒に営業活動をしていくことで、より最適なパートナーおよび製品選定ができるようになると考えています。
私は以前、パートナー企業側の社員として、日本TCSに対面する立場にいました。外から日本TCSを見てきた自身の経験も踏まえ、パートナーとの関係性をより一層強化し、お客さまに最適なソリューションを提供していきたいと考えています。
パートナー訪問時のひとコマ
SAP ジャパン 株式会社 鈴木 洋史 代表取締役社長(写真 左から3人め)他 同社社員の方々と
※掲載内容は2023年7月時点のものです