TCS では自社の戦略、お客様の声、新たな技術のエコシステムなどを基に、充実したイノベーションのパイプラインを構築しています。分野と問題が定義されるたび、調査チームがその問題に取り組み、知的財産を創出します。次に、ユースケースや市場のけん引力に応じてソリューションを開発。社内でも需要がある場合は、まず社内でアプリケーションのパイロットテストを行った上で、先進企業のお客様に導入することもあります。こうして多様なソリューションを商品化しています。
その一つ、TCS Remote Energy Management Solution(リモートエネルギー管理ソリューション、REMS)は、「エコロジカル・フットプリントの増加を抑えた、継続的なビジネス成長の実現」という環境ビジョンから生まれたものです。TCS では以前からこのビジョンに取り組んできましたが、科学的なアプローチとして、インド・チェンナイにあるTCS イノベーションラボが、施設で消費されるエネルギーのデータ分析に着手しました。並行してインドのコルカタとバンガロールのTCS イノベーションラボで行ったIoT プラットフォームの研究を活用し、Corporate Technology Organization (CTO) の「Enable(実現化)」チームが実際にプラットフォームを構築しました。
続くインキュベーション・フェーズでは、同プラットフォームの有用なユースケースとして、エネルギー監視に着目しました。TCS のエンジニアリング&インダストリアルサービス(EIS)ユニットが、システム統合やデータの取得、クレンジング、レポーティングを支援するエネルギーデータ取得管理システムを複数の施設に導入。同ユニットに加え、CTO インキュベーションチーム、管理部門が巧みに連携したことで、エネルギー監視の取り組みは強固なリモートエネルギー監視・管理システムへと進化を遂げました。
また、REMS の開発には、インド・コーチにあるリソースオペレーションセンターも協力しました。同センターに所属する、各分野の専門家やエネルギーアナリスト、IT システムの専門家など、経験豊富なメンバーから成るチームが、REMS を利用してデータからインサイトを抽出したり、アラートを解釈したり、検出された問題への理想的な対応手法を模索しました。
こうしてREMS が目指したのは、エネルギー消費データの詳細な可視化により、TCS のエネルギー管理システムを改良することです。そのためには、消費パターンにおける異常を検知し、最適化を実行するためのアラートを動作させる必要がありました。しかし、そのための取り組みは、以下の理由から複雑なものとなりました。
従来型のリアルタイム監視制御の延長線上では、イノベーティブなエネルギー節減プロセスを実現するのは困難でした。そこで考えられたのが、各施設における「正常な」消費パターンを学習した上で、異常を特定するルールを自ら定義し、是正措置を促すアラートを自動的に発する自己学習システムというアプローチです。REMS は消費パターンをリアルタイムで監視、検知、分析し、消費量削減の方法を見出すことのできる、データ検出・機械学習システムとして誕生しました。24 時間体制でエネルギー監視などを行う一方で、この先進的なシステムは従業員の快適性を損なわないための工夫もしています。併せて開発したアプリを通じて従業員が空調や照明で不快に感じたことをシステムにフィードバックできるようにし、システムの是正措置に活かしています。
インド国内で150 を超えるTCS の施設に導入された本システムは、2015 年度の5 か月間で5.5%の省エネ効果を上げました。これは数百万ドル規模のコスト節減にもなりました。
この他にも、取得データの質が向上したことで、以下のような新機能の取り組みも進んでいます。
TCS のCFO であるRajesh Gopinathan は「このTCS のIoT プラットフォームを活用し構築したソリューションは、複雑なエコシステムから集められたデータをリアルタイムで統合します。さらに高度な機械学習アルゴリズムにより、エネルギー消費パターンを継続的に学習して効果的なエネルギー管理のための適切な閾値を積極的に提案できるのです。これまでの運用結果で、TCS の年間エネルギー消費量の10%削減も可能だと分かってきました。これは18,000トンのCO2 排出量の削減に相当します」とREMS の大きな可能性を語っています。
※掲載内容は2016年7月時点のものです。