デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功に導く要素のひとつがデータの活用です。市場の変化スピードが増すなかで、新たな課題に取り組むには、取得・収集したデータに基づいた判断が求められます。しかし、デジタル技術によってさまざまなデータが取得できるようになっているものの、それがうまく活用されていない組織は多いです。
データの活用目的を明確にして適切に管理し、データから最大限の価値を引き出すことが重要です。本稿では、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)が提供する、データドリブン経営に必要なデータ環境の可視化、プラットフォームやソリューションの展開手法についてお伝えします。
TCSが世界の300社を対象に実施したアンケート調査によると、デジタル化の取り組みを阻害する要因は大きく2つありました。1 つは『旧式なデータモデル』、もう1つは『非効率で不十分なデータ管理手法』です。この課題にうまく対処できている企業とそうでない企業ではデータ活用の成果に10倍の差が出ることが分かりました。
旧式なデータモデルとは、デジタルデータではあるものの、検索や集計・解析ができるよう整理されていない「非構造化データ」や、ドキュメントデータベース、キーバリュー型データベース、ワイドカラムストア、グラフデータベースといったNoSQLモデルに対応していないものを指します。業務や部門ごとに最適化されたERPやCRMシステムなどで伝統的なリレーショナルデータベース(RDB)しか扱えない場合、ほかのシステムとの連携が取れずにサイロ化してしまいます。
非効率で不十分なデータ管理手法とは、人の手作業によるデータ連携や管理対象が限られている状態を指します。データがサイロ化し、孤立していると、ほかのシステムと連携するためには人がスプレッドシートなどで加工して次の処理に渡さなければなりません。必要なデータをすぐに活用できないため、組織で何が起きているかをリアルタイムに把握できません。
業務のデジタル化によって、さまざまなデータが取得できるようになっており、データ量も飛躍的に増えています。旧来のRDBやデータウェアハウスを中心に構成された基盤では扱いきれなくなっており、構造化データだけでなく非構造化データも一元的に保存して活用できるデータレイクのニーズが高まっています。
旧来のデータモデルと非効率な管理手法から脱却し、データからビジネス価値を創出するには、まずは自社のデータ活用の現状を把握することからはじめましょう。そして、組織に必要なコアデータを定義し、データへのアクセス性を高め、分析や自動化処理、ほかのシステムとの連携ができる基盤の構築が必要です。
TCSでは基盤に必須な要素として、「多様化したデータの取り込み」「クラウドの導入」「分析業務の自動化」「積極的なデータ運用」があると考えています。
クラウド環境上で動かすだけではなく、自動化を前提にアーキテクチャを設計すること。ファイル形式を制限せずに、多種多様なデータを柔軟に組み合わせ、必要なタイミングでデータを取り出せるようにもすべきです。ビジネス環境の変化に対応するだけでなく、セキュリティーも確保された状態で、継続的にプラットフォームの見直しとアップデートに取り組めるのが理想的なデータプラットフォームです。
そして、このようなモダンなデータプラットフォームの要件を実現するためには、「オープンデータアクセス」「仮想的なデータ統合」「適応性あるデータ索引」「包括的なデータセキュリティ」「ライフサイクルデータサービス」「データ価値の提供」の6つの機能を備えていることが重要です。
「TCS データ & アナリティクス」は、あらゆるビジネスに対応し、知的財産を活用したサービスとソリューションの包括的なポートフォリオから持続的なビジネス成果をもたらすための専門チームです。組織がデータから価値を引き出すまでのステップを3つに分け、それぞれを支援するサービスを提供しています。
最初のステップでは、組織のデータ活用の成熟度を評価します。そのためのサービスが「TCS Datom™」です。これは、重要な経営リソースである「人」「プロセス」「テクノロジー」「データ」を対象に成熟度を「1.サイロ化」「2.シンプル化」「3.拡張」「4.シナジー」「5.自己最適化」の5つのレベルで評価し、それぞれがどの段階に位置しているかをダッシュボードに示します。各項目の評価は数値によって可視化され、足りない項目への取り組みを強化することで全体的なステップアップを目指せます。
TCS Datom™は、データドリブン経営のためのプロセス、ベストプラクティス、フレームワークが説明された手順書とも言えるものです。成熟度評価によって、自社の理想と業界リーダーの取り組みとのギャップを知ることで、ロードマップを描くことができます。
AIを実装した高度化の例としては、監視アラートを受け取って、環境情報や過去の対応実績などのデータから自動修復させる一連の手順やプロセスがあります。TCSでは、究極的に人間が介在しない、ほぼ完全な自動化プラットフォームを実現しており、日本市場向けにも提供が可能です。AIは家電にも提供される時代ですので、IT運用にも使わない手はありません。
2番目のステップは、データプラットフォームの構築です。そのためのソリューションフレームワークが「TCS DAEzMo™」です。これは、データ運用の自動化を推進するTCSのサービスデリバリーモデル「MFDM(Machine First Delivery Model)」を採用し、先に説明したような要件と6つの機能を備えたデータプラットフォームへのモダン化を支援するものです。
TCS DAEzMo™では、現場で実証済みのプロセスおよび方法論を組み合わせ、最新のデータウェアハウスとデータレイクの実装、アプライアンスの再プラットフォーム化、マスターデータ管理、およびデータマーケットプレイスのセットアップなどを包括的にカバーしています。たとえば、基幹システムのデータやクラウド上にあるデータを、AIと連携させてシステム障害を素早く検知したり、データを使ったマネタイズの方法論を提供したりできます。
3番目のステップは、TCSやパートナー企業のアプリケーションを組み合わせて顧客の課題に対して適切なソリューションを提供する段階です。そのためのフレームワークが「TCS Decision Fabric™」です。TCSは70社以上のパートナー企業とエコシステムを構築して、あらゆる業種やビジネスシーンに対して最適なソリューションを提案しています。複数ソースからのデータの取り込みや統合、データウェアハウスの分析、データガバナンス、データアナリティクス、メタデータ検索などアプリケーション類を利用しながら、多様なビジネスにおけるデータ活用を支援しています。
たとえば、顧客分析では、サービス改善や収益拡大、ポートフォリオ改善、離反率削減、事後対応策の提案が可能です。マーケティング分析なら、リスクとインセンティブに基づいた価格設定のサポートや複数チャネルにおけるマーケティング予算の最適化を実現します。プロダクトやサービスの分析だけでなく、従業員の生産性や幸福度を向上する労働力分析や、バリューチェンや持続可能性を測るサステナビリティ分析も支援可能です。
TCSでは、世界的に不足するデータサイエンティストなどの人材を豊富に抱え、グローバル規模で企業のデータ活用を支援できる強みを持っています。TCS データ & アナリティクスによるコンサルティングやシステム構築は、世界に4万6000人を擁するメンバーがサポートします。
TCS Datom™による5段階の成熟度評価を日本企業に実施すると、その多くは「1.サイロ化」「2.シンプル化」にとどまっているのが実情です。TCSのソリューションを利用することで、より早く次のレベルに進み、データドリブン経営の実現に近づくことができると考えています。
※ 掲載内容は2023年4月時点のものです