イベントレポート
AWS Summit Japan 2024
Al First Enterprise―ビジネス変革をデータとAI活用で実現する
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)は、2024年6月20日(木)と21日(金)に幕張メッセで開催された「AWS Summit Japan 2024」にゴールドスポンサーとして出展しました。
6月21日(金)のパートナーセッションでは、竹中工務店 デジタル室 先進デジタル技術グループ グループ長の丘本 道彦 氏に登壇いただき、同社のデジタル変革の取り組み事例についてお話しいただきました。
本稿では、このセッションの内容と、日本TCSのブースの展示内容や来場者の反応についてレポートします。
今回のセッションのタイトルは「『建設デジタルプラットフォーム』によるデジタルデータと最新技術活用の取組み」。建設業界大手の竹中工務店さまの取り組みとあって、会場には多くの方が訪れました。冒頭に挨拶した日本TCSの長谷川隆一からは、日本TCSでは、お客さまの競争力向上とビジネス変革の加速を目指すとし、日本人メンバーとインドを中心としたグローバルな知見を持つメンバーによるハイブリッド体制が強みであると説明しました。
日本TCSはこの特徴を活かし、2020年から竹中工務店さまの建設デジタルプラットフォーム構築に協力しています。
長谷川は「プラットフォームのアーキテクチャ設計から各種アプリケーションの要件定義および保守運用までを支援しております。生成AIやデジタルツインなどのPoCにも協力し、機動的な要員配置によって迅速かつ柔軟に対応しながらコスト削減にも取り組んでおります」と説明し、丘本 道彦氏の登壇を促しました。
竹中工務店は、建物の建設工事に関する請負・設計及び監理を行う大手ゼネコンで、連結売上高は1.6兆円を超えます。
竹中工務店グループの成長戦略では、竹中工務店が建物の設計から施工を行い、土木やファシリティマネジメントの企業が連携し、まちづくりの構想段階から企画・計画・建設・維持運営まで、ライフサイクル全体を通じてさまざまな課題に取り組み、サステナブル社会を実現するとしています。
丘本氏は「まちのライフサイクルにおいてステークホルダーとの対話を深め、社会課題に対応し、安心して暮らすことができるサステナブルな社会の実現を目指しています」と説明しました。
建設業界の大きな課題の1つが労働生産性の低さです。丘本氏は全産業が4,522円/人・時間に対し、建設業では2,944円/人・時間と、低い状況にあることを指摘しました。
そして、2015年に発表された資料として、「2014年に343万人いた技能労働者うち、2025年にも残っているのは216万人との予測があり、新規入職者の確保と共に生産性向上の必要性が謳われていました」と説明。
さらに2024年からは改正労働基準法による労働時間の規制が適用されるなど、ますます生産性の向上が求められる状況となっています。
これらの課題を克服するべく、竹中工務店は2030年に目指す姿として建設事業のデジタル変革「Building4.0®」を掲げています。建物のライフサイクル全体にわたる業務プロセスをデジタル化し、データ駆動型にすることを目指し、建築の提供から運用まで、持続可能な方法でお客さまの課題を解決し、満足度の高いサービスを実現したいと考えているのです。
「データをデジタル化して蓄積して建設プロジェクトに活用することで、抜本的な生産性向上を図りたいと考えております。設計段階では、例えばBIM(Building Information Modeling)データを使い、お客様を含めた関係者と連携し、AIによるサポートも行います。プロジェクト管理ではプロセスを可視化し、迅速に支援できる体制を整えます。さらに、作業所では各種デバイスを利用し、効率向上や施工管理の自動化を図るなど、様々な業務変革を目指します」(丘本氏)
この構想を実現するのが、設計・生産のプロジェクトデータを一貫して活用することを目指した「建設デジタルプラットフォーム」です。従来は図面や仕様書、打ち合わせ内容などが別々に管理されていましたが、BIMデータを用いて整合性を保ちながらプロジェクトを進めることで、効率と精度を高めていきます。そのために新しいデータ基盤を整備していきました。
「建設デジタルプラットフォームはアマゾンウェブサービス(AWS)上に構築しており、TCSをはじめとする多くのパートナーの支援により実現いたしました。TCSに期待するのは、グローバルな知見と幅広い対応力です。蓄積したデータやIoTデータを活用するためのインターフェース、BI・AI活用ノウハウなどを提供し、スムーズな基盤の構築を支援していただいています。データ活用のための社内体制整備に関しても助言いただくなど、非常に多岐にわたるサポートに感謝しています」(丘本氏)
ほかにも、建物画像からサビやヒビなどの劣化部分をAIで抽出する「建物劣化診断」や、過去の実績から受注見込み工事における「施工管理必要人員のAI予測」なども行っており、さらに、デジタルツインを業務プロセスに組み込むための検証をTCSとともに進めています。丘本氏は「BIMデータから作業所のそれぞれの進捗状況を3Dで表現していくような取り組みにもTCSの協力をいただいています」と補足し、今後の展望として、生成AIやデジタルツインなどのテクノロジーによってまちづくりをすすめていきたいとコメントしました。
セッションの終わりに長谷川は、「いま皆さまがさまざまなレベル・ステップでAIに取り組まれているかと思いますが、弊社のブースでは、竹中工務店さまが実施されているようなデータプラットフォームや生成AIの活用についてもご紹介しておりますので、ぜひご覧いただければと思います」と呼びかけました。
AWS Summit Japan 2024で日本TCSが掲げたコンセプトは「Al First Enterprise」です。ブースでは、これらを実現する生成AI、データ基盤、セキュリティ、デジタルツインの4分野に関する展示を行ないました。各分野の展示や来場者の反応を紹介します。
生成AIのソリューション開発において、日本TCSは業務用文書のデータベース化や、ユーザーの質問に対する関連情報の検索・回答機能を実装しています。また、画像や文字からの情報検索機能も開発されました。特筆すべきは、触覚情報を伝達するロボット技術と生成AIを組み合わせ、音声命令をロボットの動作に変換する革新的な取り組みです。これらの技術は、ユーザー企業やシステムインテグレーターを含む来場者から高い関心を集めました。
データ基盤については、クラウドも含めたプラットフォームの構築方法についてのコンセプトを紹介しました。来場者からは、AI利用の具体的な取り組み方や実現方法と、それに先立つデータの整理や、データのサイロ化解消についての相談が多く見られました。
セキュリティ分野では、ガバナンスと人手不足が主な課題となっています。これらの問題に対処するため、AIを活用したセキュリティ対策への関心が高まっています。最新のセキュリティツールには、脅威の検知や分析、レポート作成を自動化するAI機能が組み込まれているものが多くあります。TCSはこれらのツールの活用支援を通じて、人手不足を補い、効率的なセキュリティ運用の実現を目指しています。
デジタルツインの展示では、製造業のお客さまから工場設備のデータを活用した保全強化などの取り組みが注目されました。多くの製造現場では、データ収集までは進めていますが、その活用方法に課題を抱えているようです。特に、現場の工場運転者にデジタル技術の活用意識を浸透させることが大きな課題となっています。そのため、多くの企業がデジタル活用の意義を現場に理解してもらおうとしているようです。
AWS Summit Japan 2024の2日間、非常にたくさんのお客さまにお越しいただきました。日本TCSでは、コンサルティングから技術開発まで幅広く対応可能で、グローバルな知見に加え、生成AIなど先端技術を活用したプロジェクトの実現力も注目されています。Al First Enterpriseというスローガンのもと、データとAI活用でお客さまのビジネス変革を支援してまいります。
TCSは、Amazon Web Services(AWS) がグローバルに展開するシステムインテグレーター(GSI)に授与するアワードの中でも最も栄誉あるGSI Partner of the Year – Global 2023を受賞しました。
これは、TCSの優れた業績と、さまざまな業界でのイノベーションの推進における重要な役割が評価されたものです。