イベント登壇&出展レポート
Gartner IT Symposium/Xpo™
デジタル・スレッドとデジタル・ツインで製造業が新たなステージへ
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)は、2024年10月28日から30日にかけて、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて開催されたGartner社主催の「Gartner IT Symposium/Xpo™」に、出展いたしました。
最終日の10月30日には、日本TCSのPLMシニアコンサルタントである秋山牧雄が「デジタル・スレッドとデジタル・ツインで実現する、コネクテッド・デジタル・エンタープライズ (CDE)」というテーマで製造業のDXに関する講演を行いました。本稿では、このセッションの内容に加え、日本TCSのブースでの展示内容や来場者の反応についてご報告いたします。
ソフトウェアの進化により、製品のインテリジェント化が進んでいます。多くの企業が、製品の設計、製造、持続可能性の変革を目指し、次世代のデジタル・ソリューションを模索しています。秋山は、日本TCSに入社前は、PLM(製品ライフサイクル管理)ベンダーのプリセールスとして知見を重ねてきました。今回のセッションでは、従来のPLMやMES(製造実行システム)だけでは実現できない新たなビジネスモデルへのアプローチの解説とあって、多くの聴衆の注目を集めました。
現代の製品には、よりスマートで安全性が高く正確、かつコネクテッドであることが求められています。また、ユーザーに対して常に新しい体験を提供し、継続的な対話や個別対応を実現することも重要です。企業各社は他社との競争に遅れを取らないよう、製品開発サイクルの短縮を目指しており、そのためにソフトウェアの重要性が増しています。さらに、「知識の資本化」という課題もあります。エンジニアの高齢化が進む中で、企業が長年蓄積してきた知識やノウハウが失われていく可能性があるため、システム機能の充実などの対策を講じていく必要があるのです。
また新たなビジネスモデル、イノベーション、エコシステム、サステナビリティが求められる中、アジャイル、オートメーション、クラウドなどの技術要素を統合した新たな設計手法や生産、サービスへの対応は必要不可欠です。しかし、多くの組織が新たなITやプロセスに対応できていません。PLMを活用することでデータの連携は比較的進んでいるものの、上流工程など、バリューチェーンを構成するプロセス全体が連携されていないのが現状です。
「各プロセス間に壁が存在するため、データが断片化しています。データ連携もファイルやドキュメントでのやり取りが主流となっており、人手による作業も介在しています。このような仕組みでは、全体の状況把握が困難となり、ビジネスに関する洞察を得られないという問題が生じます」(秋山)
TCSでは、こうした状況を解消するために「コネクテッド・デジタル・エンタープライズ(CDE)」というアプローチを提唱しています。このアプローチでは「デジタル・スレッドがナレッジという織物を紡ぐ」というコンセプトで、一連のステップをつないでいきます。まず、お客さまの要望を受け取り、それらを集約して設計を行います。次に、製造方法の決定、サプライヤーの選定、どの工場で生産するかといった情報を統合し、製造データとしてまとめます。そして、製品が製造され市場に出た後、どのように管理されるかという流れで進行します。
各ステップにおいて、設計段階では「プロダクト・ツイン」、すなわち必要な情報をモデル化して維持する仕組みを導入します。次に製造段階では「プラントツイン」を活用し、工場の情報で管理します。さらに、製品が市場に出た後は「アセット・ツイン」で管理を行います。これらのデジタル・ツインを実現し、各プロセスを連携させることで、製品が顧客の手元に届いた後のフィードバックを次の設計に反映するクローズドループの構築を目指します。これが実現できれば新しいビジネスモデルへの対応や迅速な意思決定が可能になり、顧客体験の向上に加え、サステナビリティ目標の達成にも取り組むことができるのです。
例えば工場の効率化には、デジタル・マニュファクチャリングやインテリジェント・プラント・オペレーションが有効で、品質予測や人員配置の最適化をシミュレーションで行います。さらに、AIや機械学習を活用したインテリジェントオートメーションにより、人の介入を減らし、製品ライフサイクル全体のデータを追跡し、状況を把握する自動化の仕組みも有効です。
秋山は最後に「TCSには『私たちは変革のパートナーです』というキャッチフレーズがあります。インドを代表するコングロマリット、タタグループのIT部門会社ですが、注目いただきたいのは、従業員の国籍(152)と展開国数(55)です。CDEの実現には必ずグローバル対応が必要ですので、我々のような企業が求められていると考えています」と呼びかけました。
日本TCSのブースでは、CDEの概念をわかりやすく紹介するため、倉庫、組立、梱包、発送などの工場機能を再現した模型と、それに連動する各種システムを用いたデモンストレーションを実施しました。ERPシステムを活用し、倉庫からのアイテムの払い出しや製造指示の送信を行う、また製造実行システム(MES)と連携して、在庫状況や出庫指示をリアルタイムで確認するなどの仕組みを披露しました。
ブースの担当者は、来場者の反応について「来場者の方々には、DXやスマートファクトリーに関心がありながらも何から始めるべきか悩んでいる方も多く、今回のデモで理想的なイメージをつかんでいただきました。また、システムの導入を具体的に検討されているお客さまも多く、営業担当への相談へと進む姿も見られました。一方で、DXの初めの一歩を迷っている方もいらっしゃいます。CDEは理想的な取り組みで、達成までに距離を感じる方もいますが『これが実現できたらいいですね』と前向きなコメントをくださる方も多かったです」と話しました。
製造業の皆さまが新しい仕組みを導入する際、既存の業務プロセスに沿って進めるよりも、新しいものに置き換え、業務内容自体を変革する方が、迅速かつ合理的で効率的です。しかし、これは決して容易なことではありません。日本TCSでは、コンサルティングからシステム開発・導入、さらには運用・保守まで一貫してサポートし、お客さまが新たなシステムを適切に運用できる体制を提供しています。
本展示会でご紹介したサービスや製品は、当社麻布台本社のDigital Continuity Experience Center (DCEC)でも詳細をご説明しています。個別のワークショップ開催やショーケースの実施も可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
秋山 牧雄
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
IoT & デジタルエンジニアリング統括本部
PLMシニアコンサルタント
IT業界で20年上の経験を有し、特にPLM(Product Lifecycle Management / 製品ライフサイクル管理)においては、システム導入の提案から導入後のフォローに至るまで一貫したサポートを行い、その普及に大きく貢献。
日本TCSに入社以前には、ダッソー・システムズにおいて10年以上PLM ENOVIAのエンジニア、および3DEXPERIENCE platform のソリューション・アーキテクトとして活躍。自動車、産業機械、ハイテク(半導体を含む)、医療など、様々な業界におけるPLM導入普及活動に従事。
PLMのみならず、MBSE、3DCAD、EBOM、MBOM、デジタル・マニュファクチャリング、CAEとの連携を考慮した、総合的プラットフォームの導入を継続的に支援。