三菱商事株式会社
三菱商事グループの総合力を最大化
三菱商事株式会社(三菱商事)は、世界中に広がる拠点と約1,700の連結事業会社と協働しながらビジネスを展開し、幅広い産業を事業領域に、トレーディングのみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生産・製造などの役割も自ら担っています。
連結ベースのITマネジメント、システム・ITインフラなどの整備・活用促進、IT面でのグループ全体の企業価値向上をミッションとする三菱商事ITサービス部の本田 尚孝部長と、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)の三菱商事向けインフラストラクチャーサービス責任者である矢野 健一との対談を通じ、三菱商事と日本TCSが歩んできた道のりを振り返ります。
三菱商事株式会社
ITサービス部
本田 尚孝 部長
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
トレーディング事業統括本部 MCビジネス本部
デリバリーパートナー
矢野 健一
矢野──今回は、三菱商事のIT・デジタル活用における、日本TCSとのパートナーシップをテーマにお話をお伺いしたいと思います。日本TCSは、単なるITベンダーとしてではなく、成長と変革のパートナーとして、三菱商事の業態の変化に応じて幅広いIT・デジタルサービスを提供することを目指してきました。これまでを振り返って、当社との取り組みや当社の役割をどのように感じているかお聞かせいただけますか。
本田──日本TCSとは長きにわたりパートナーとして共に歩んできました。提供していただいているサービスの“広さ”や“深さ”に加えて、当社のビジネスモデルの変化やIT・デジタル技術の進化に応じて、柔軟かつ的確にサポートを継続してくれている点を高く評価しています。
矢野──ありがとうございます。確かに、これまで三菱商事の業態は大きく変化してきましたね。
本田──三菱商事のビジネスモデルの変遷を振り返ってみると、1980年代までは、総合商社としてトレーディング活動を中心に、国境を越えた仲介役として幅広い産業に貢献してきた歴史があります。
その後、総合商社を取り巻く環境が激変する中、事業投資を加速し、事業運営主体を三菱商事(単体)から事業投資先にシフトさせ、現在では主体的に価値を創造し成長していく事業経営へとさらにシフトを図り、世界中のさまざまな業種・業態でグループ企業と共にビジネスを行っています。時代の変化に合わせてビジネスモデルも進化する中、われわれの事業を支えるITポートフォリオも絶えず進化させてきました。
矢野──はい。三菱商事のITポートフォリオを振り返ってみると、単体業務中心のトレーディング期には、膨大な取引情報を支える業務システムや単体決算のための会計システム、また電子メール・Telexなどのシンプルな通信ネットワークが大勢を占めていました。
その後、事業運営主体が事業投資先にシフトすることに対応して、連結決算や事業投資管理のためのシステム、より迅速・効率的なコミュニケーションを可能とするグループウエアや文書管理ツールなどの導入を進めてきましたね。
本田──おっしゃる通りです。事業投資先のシステムの共通化・標準化にも取り組み、さらに、既に導入した各システムやプラットフォームについてはより一層高度化させることにも取り組んできました。ビジネス、ITの両面で、グループとしてのシナジーの発揮に取り組んできましたが、その間、日本TCSには、三菱商事の変革をITと業務支援の両面で支えてきてもらいました。
矢野──三菱商事が全社で共通利用するITインフラや基幹業務システムはもちろんのこと、各事業部門の固有業務システムの新規構築・改善、保守・運用、利用者向けサービスデスクの運営など、全方位にわたりサポートしてきました。また、先ほどのお話にもあったように、三菱商事の業態転換、事業投資の加速と並行して、サービスの提供先も広く事業投資先各社に拡大しています。
本田──ITシステムの企画からユーザーサポートまで支援してもらうためには、技術的なスキルだけではなく、ユーザー業務に対する知識、社内規定やプロセス、内部統制などに対する知見の“深さ”も必要です。
矢野──はい。三菱商事からの協力も頂いて、業務に携わる社員に対し、ナレッジ継承のための教育を徹底しています。システムが対象とする業務自体の理解も深め、適切なメンバー・ローテーションと組み合わせることで、質の高いサービスの継続を担保しています。そうした取り組みができるのも、お互いの信頼関係があってこそだと考えています。
本田──その通りですね。三菱商事に対する深い理解と国内外での豊富なITシステム企画・運用の実績をバックボーンに、ITコストの予算・実績などの計数面の管理、ITベンダー管理、システム化の最上流工程である企画・構想立案、既存システムの再構築計画も含めたシステムのライフサイクル管理など、ITマネジメントの各分野でもサポートしてもらっていますよね。
矢野──今後も三菱商事のITサービス部と一体となって、より広く深くサポートできるように、取り組んでいきたいと考えています。今後の三菱商事が目指す姿についても、お聞かせいただけますか。
本田──はい。昨年公表した『中期経営戦略2024』では、三菱商事グループの総合力強化による社会課題の解決を通じて、スケールのある『MC Shared Value(共創価値)』を創出し続けることを打ち出しました。価値創造と成長に資する事業経営に取り組み、新たな事業機会を創出し、社会課題の解決などにもチャレンジしていくことになります。
矢野──これまで以上に三菱商事グループとしての連携、総合力が大切になってくるということですね。その中で、日本TCSに期待されていることはどういったことでしょうか。
本田──まず、企業活動のための必須のインフラ、ライフラインであるIT基盤の運用管理を引き続きしっかりと担っていただきたいと思います。三菱商事グループ内外のつながりが増すにつれ、これまで以上に、シームレスなシステム連携が必要となりますし、安定した企業運営・グループ経営を支えるIT基盤の重要性はますます高まります。ユーザーからは、24時間365日、正常稼働が要求される重要なミッションです。地味で目立たない役割ではありますが、“土台”“足元”をまずはしっかり固めていただきたい。
加えて、グループ横断でのデータ活用や分析によって、意思決定や新たな価値創出を支える新たなプラットフォームやツール群の整備も進めて、ビジネス変革を後押ししていく計画ですので、この部分でも日本TCSからの新たな提案や強力なサポートを期待しています。
矢野──三菱商事としては、日本TCSとのパートナーシップにより、具体的にどのようなメリットが生まれているとお考えでしょうか。
本田──さまざまなメリットを感じていますが、一言で言うと、“本業をより強くする”ことができるということでしょうか。例えば、昨年、自社データセンター利用から、クラウドサービスへの移行を完了したのですが、既存ITコストの大幅な低減によって、新技術の研究や試行、ITリテラシーの向上など、先行投資や新たな施策の原資を拡大することが可能となりました。
また、自社でIT資産を保有せず、日本TCSが提供する各種サービスをユーザーとして利用している場合には、バランスシートの改善やROA・ROIの向上となって、財務面でも寄与することとなります。
矢野──引き続き、最適な解決策の選択やコスト最適化の実現に向けて、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)が持つグローバルな方法論やソリューションも積極的に提供していきたいと思います。さらに、人材の観点ではいかがでしょうか。
本田──日本TCSにIT業務を担ってもらうことで、当社では、より多くの人材をIT側からビジネス側へとシフトすることが可能となります。ビジネス現場でIT・デジタル技術を活用した変革に向けての推進力が増していくという好循環が生まれています。
矢野──特にAMS(Application Management Service)の分野においては、IT先進国インドの人材や、TCSの技術と知見を活用した日本とのハイブリッド体制によるサービスを利用していただくことのメリットは大きいと考えています。日本国内でのIT人材不足や高コスト化の課題に対して、グローバルリソースの活用は大きなアドバンテージを生み出していくはずです。
本田──当社で言えば、海外拠点向け基幹システムのAMSが代表例ですね。多言語対応や時差対応を含め、ハイブリッド体制で効率よくしっかりとサポートしていただいており、全世界のエンドユーザーからの評価も非常に高いものがあります。
矢野──ありがとうございます。おっしゃる通り、三菱商事の拠点・事業投資先はグローバルにあらゆる業種・業界に広がっていますが、IT・デジタル技術の活用を進める上での当社の役割についてはどのようにお考えでしょうか。
本田──事業投資先については、三菱商事本社が主導してグループ内で共通化・標準化を進めていく領域と、各事業投資先が主体となり固有ニーズに合わせてスピーディーに進めるべき領域の双方があります。ここの見極めとバランスが重要です。どちらの領域においても三菱商事グループとしてのITガバナンスを機能させる役割が求められますが、日本TCSにはグループ全体のパートナーとして、われわれと共にこの重要な役割を担っていただいている認識です。
矢野──三菱商事の皆さんには日々の活動の中で当社メンバーに対して直接、丁寧なアドバイス、ねぎらいの言葉や感謝のメッセージなどを頂くことがあり、現場で汗を流しているメンバーの働きがい、モチベーション維持につながっています。人材育成やローテーション面でもご協力を頂いており、こうしたお互いの理解や協力体制も、パートナーシップ成功の要因の一つではないでしょうか。
本田──同感です。“より良い品質で、より早く、より安く”とわれわれの要求は常にエスカレートしがちですが、日本TCSのメンバーからも、遠慮や忖度を抜きにして、忌憚なく発言してもらいたい。お互いの主張をぶつけ合って真剣に議論し合える関係性は今後とも続けていきたいですね。共通の目的達成のためには、このような信頼関係が何より大切と感じており、われわれが日本TCSをパートナーとして選ぶ最大の理由はそこにあるのです。
矢野──日本TCSでは、三菱商事への長期間にわたる継続的なサービス提供とサービス品質の向上に取り組んできました。そして昨年、三菱商事とのパートナーシップを背景に、当社の本社内に『MCコマンドセンター』を設立しました。
本田──非常に良い取り組みで、MCコマンドセンターが、当社向けのITサービスのハブとして機能してくれていると感じています。先ほど申し上げた、“土台”“足元”を固めるための拠点であると同時に、新たなプラットフォームや技術の導入、新規ソリューションやサービスの創出、さらなる効率化やビジネス変革のためのアイデアの発案などにつながるコラボレーション=“共創”の場としても育ってほしいですね。TCSグローバルの持つ知見・スキル・専門性を日本TCS経由で紹介していただいて、われわれの常識を超えるような新たな価値を提供してくれることも期待しています。
矢野──はい。足元固めという意味では、変化への適応力と柔軟性を伴った“レジリエンス”が、共創の場という意味では“イノベーション”の創出とスピードをもたらす“アジリティ”が、必要とされる時代と考えています。ご期待に沿えるよう、三菱商事の理念や目指す姿の実現に向け、知見やテクノロジー、パートナーエコシステムなど世界中のTCSが持つ全ての力と、三菱商事に関する深い理解で、これからも三菱商事の成長と変革に貢献していきます。
主にITオペレーションとアプリケーション・マネジメント・オペレーションの三菱商事向け業務を集約し、企画立案から運用まで多岐にわたるプロジェクトを超えたコラボレーションを加速させるためのセンター。特別なアクセス制限が必要な業務については、独立したセキュリティー・エリアも設置する。クラウドやサイバーセキュリティーも含めた効率的なIT運用を支える日本TCSのマネージドIT運用サービスPRISM™、さらにはインドのJapan-centric Delivery Center(JDC)との連携により幅広いテクノロジーをサポート。三菱商事とTCSのサービスをシームレスにつなぐオペレーションの中心として、より一層のサービス向上に努められるよう機能している。
1. 欧州における総合エネルギー事業
2. ノルウェー、チリ、カナダで展開する世界有数のサーモン養殖事
3. 世界最大の生産量を誇るチリの銅事業
4. ジャカルタ郊外における都市(スマートシティ)開発事業
創立:1954年7月1日(設立1950年4月1日)
本社所在地:東京都千代田区
事業内容:天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループに産業DX部門を加えた体制で、幅広い産業を事業領域として多角的なビジネスを展開
※掲載内容は2023年3月時点のものです