イベント開催レポート
Data Day 2024
~データとAIがもたらすビジネス変革へ~
変化の激しいビジネス環境の中で、企業は厳しい競争にさらされ、戦略の見直しや意思決定の迅速化が求められています。そして、急速に普及する生成AIが、あらゆる業界のビジネスを変えようとしています。このような状況下で、データは極めて重要な資産となり、競争に勝ち抜くためにはその活用が不可欠です。日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)は、2024年3月7日に生成AIとデータに関するコンファレンスを開催しました。日本TCSのグローバル知見に基づいたアプローチを、お客さまやパートナーの最新事例も交えて紹介しました。ここではその開催内容の一部をご紹介いたします。
AIとデータ、クラウドによって高い価値を生み出す
開会のご挨拶では、日本TCSのサティシュ・ティアガラジャンが登壇。挨拶のなかでサティシュは、TCS及びそのパートナーがAI、データ、クラウドへの投資及びこれらをビジネスに応用する上での見解を共有し、特に日本市場に対する強いコミットメントを示していることを強調しました。
AIファースト―戦略の立案から実装までを包括的に支援
DX推進とデータ利活用においては、データに基づく意思決定「データドリブン経営」とAI技術の活用が重要となります。日本TCS では、データ&アナリティクス ライフサイクル管理を「(1)戦略検討・立案」「(2)データインフラストラクチャー導入支援」「(3)データ分析・AI活用支援」にて実現しています。日本TCS西のセッションでは、データドリブン経営の必要性を説明した後、最初の段階である「(1)戦略検討・立案」について紹介しました。
戦略検討と立案では、まず各企業の現状理解と問題分析から始め、企業の事業戦略に基づいたIT戦略で課題を解決します。課題明確化後は、対策検討とロードマップ作成を支援します。AI活用では、人間中心からAI主導の業務への変革を目指します。TCSは、グローバルな実績と知見、最適なパートナーと連携し、顧客の課題解決を支援しています。
AIを支えるデータ基盤―データメッシュというアプローチ
続いて日本TCS小島 英剛は、データ&アナリティクス ライフサイクル管理における「(2)データインフラストラクチャー導入支援」について語りました。
AIを効果的・効率的に活用するためには精度の高いデータが重要であり、そのデータが格納されるデータレイクにはさまざまな課題が起きています。これらを克服するためには、データメッシュという分散型アーキテクチャが有効です。このアーキテクチャを利用することで、各部門がデータを管理し、セルフサービスの基盤上で連合型ガバナンスを行うことができます。例えば、ある欧州の通信大手は、TCSと連携してセルフサービス分析とコミュニティサービスを含むプラットフォームを構築し、データの一貫性問題と情報の孤立を解決し、顧客体験を向上させました。
日本TCSの生成AI活用事例―ユーティリティ、製造、保険
すべての業界で生成AIが活用されはじめており、TCSではグローバルに支援を行っています。続くデータ&アナリティクス ライフサイクル管理の「(3)データ分析・AI活用支援」に関しては、日本TCSシニアデータサイエンティストの三澤 瑠花が登壇。当社の生成AI戦略に加え、日本における具体的な生成AI活用事例を共有しました。
ユーティリティ業では、大規模言語モデル(LLM)Claude2と、外部情報検索の仕組みであるRAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用して、専門知識を必要とする複雑な質問にも的確に答える仕組みを構築し、意思決定のスピードアップに貢献しています。
製造業においては、家電メーカーの付加価値創出支援の事例もあります。画像認識AIとLLM、そして画像生成AIを組み合わせ、冷蔵庫のなかにある食材からオリジナルレシピを生成する機能の可能性を研究しました。
保険業においても、市場動向分析や各国の法令準拠、保険証券の生成と管理など、生成AIによる恩恵が得られる部分はたくさん考えられます。日本TCSでは、保険商品の推薦サービスチャットボットの実装支援を行った実績があります。
事例を紹介した後、TCSが生成AIを核としたビジネスユニットを展開し、グローバル知見とパートナーシップを活用していることを説明しました。TCSはビジネス影響、技術可能性、倫理・法的配慮、戦略整合性を踏まえ、AIモデルの選定から導入、運用まで支援しています。
続くセッションは、三澤が紹介した保険業界での具体的な事例となる東京海上日動システムズ様にご講演いただきました。
東京海上日動におけるデータ活用組織と生成AI活用
東京海上日動様は、データ活用を推進されています。それを支えているのが、東京海上グループのIT戦略を担う東京海上日動システムズ株式会社です。東京海上日動システムズ株式会社 新川 祐樹氏のセッションでは、東京海上日動様のデータ戦略と、生成AIの活用事例をご紹介いただきました。
東京海上日動システムズでは、データ活用推進のために東京海上ホールディングスと合同でデータ分析COEを設立し、東京海上グループ内の事業会社と連携しています。生成AIの導入に関しては、効果が高いと予想される特定の業務領域にAIシステムを開発し導入するトップダウンアプローチと、汎用業務に広く利用できるように社内で生成AIを導入するボトムアップアプローチの両方で進めており、全社員が利用できるようにしています。
新川氏はTCSとともに開発した「建設機械向けレコーダーを活用したテレマティクスサービス」へのAI活用事例について説明しました。ショベルカーの作業に伴う事故を減らすため、長時間の同じ作業をしている人にアラートを発するシステムです。このシステムは、ドライブレコーダーのセンサーデータを使用して、掘削、前進、旋回などの作業内容を推定するモデルに基づいています。
このプロジェクトは、ドライブレコーダーに建設機械の挙動を推定するアルゴリズムを導入する際に多大な苦労があったと言います。新川氏は「ドライブレコーダーのリソースに限りがあり、AIアルゴリズムを追加した結果、装置が非常に高温になる問題が生じました。しかし、TCSの技術力とレコーダーメーカーとの密なコミュニケーションによって、メモリ使用の最適化とアルゴリズムの効率化を行い、この問題を克服しました」と振り返りました。
当日は、パートナー企業さまにもご登壇頂きました。当社との取り組みを含め、最新トレンドや先進的なテクノロジー、具体的な事例の紹介も交えながら、ソリューションのご説明がありました。
データ活用の課題とそれを解消するSnowflakeプラットフォーム
パートナー企業であるSnowflake合同会社 譚 常亮氏のセッションでは、データ利活用の課題を解消するShowflakeプラットフォーム「Data Cloud」のご紹介がありました。
データのサイロ化、セキュリティとガバナンスの問題、一部のデータからの限定的なインサイト、インフラコスト上昇、増大する運用負荷などの課題に対応するため、Snowflakeはデータレイク、ウェアハウス、データマート等各種データソースを統合し、Microsoft Azure、AWS、Google Cloudのいずれのクラウド環境上でも統一的なユーザー体験を提供します。また、コスト効率とプライバシーを守る共有環境と、即時に利用可能な多様なデータセットを提供しています。
譚氏は、グローバル製造企業がSnowflakeを採用し、クラウド移行のスケーラビリティ、リスク管理、プロセス自動化、アジリティとパフォーマンスの向上を実現した事例についても共有しました。
生成AI活用のフェーズへ―AI+BIが導くトランスフォーメーション
日本マイクロソフト株式会社 佐藤 直樹 氏のセッションでは、MicrosoftのAIと分析関連サービスの概要と活用例を紹介しました。Microsoftは製品全体にAI機能を組み込み、「責任あるAI」の原則に基づきデータの安全を確保しています。
佐藤氏は、Azure OpenAI Serviceを活用した事例として、自動ドキュメント処理、コンタクトセンター、インシデント報告と予測、仮想エージェント、異常検出、予知保全、電子メールの自動化などがあり、日本企業では主に社内チャットボットの利用が見られる一方、欧米企業ではより多様な用途での活用が進んでいる傾向を話しました。
佐藤氏は、汎用業務だけに生成AIを活用するのでなく、データ分析にも活用できればDXを加速できるとし、「ぜひTCSのようなパートナーの力を使って、AI活用を広げていただきたい」と述べました。
ご来場いただいた方々からは、「新しい学びがたくさんあった」「先進的な取り組みを聞くことができた」などといったコメントをいただきました。今回のイベントでは、急速に普及する生成AIによりあらゆる業界のビジネスが急速に変化する中、データ戦略、データアーキテクチャ、そしてデータからインサイトを得るための取り組みの重要性が再確認されました。日本TCS自身もAIファースト企業への取り組みを進めていきます。
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