Press Release
2022年6月29日
東京、2022年6月29日: タタコンサルタンシーサービシズ(以下、TCS)と慶應義塾大学発ベンチャーであるモーションリブ株式会社(本社:神奈川県川崎市、代表取締役CEO:溝口貴弘工学博士、以下、MotionLib)は、リアルハプティクス®(RealHaptics®:力触覚伝送技術)による社会課題解決に向けた共創のための覚書(MoU:Memorandum of Understanding)を締結したことを発表しました。
リアルハプティクスとは、現実世界、仮想世界、あるいは、その両方に存在する対象(モノ)との接触によって生じる「力加減」「感触」などの力触覚刺激を正確にデータ化(定量化)して伝送する技術で、慶應義塾大学 新川崎先端研究教育連携スクエア 大西公平特任教授が発明し、2002年に世界で初めて鮮明な力触覚伝送に成功しました。
リアルハプティクスは、「位置制御」と「力制御」を同時に達成することで、力触覚刺激をデータ化し、遠隔地に双方向に伝送することを実現します。これによって、操作者はロボットを介して力触覚刺激をリアルタイムに感じながら、「優しく」、「器用に」、「繊細に」遠隔操作することが可能になります。
これまで、TCSは、さまざまな業界のお客さまにイノベーションをもたらすべく、リサーチ&イノベーション(研究開発)の拠点(インド・米国・英国)およびIoT&デジタルエンジニアリング部門において、機械学習、ソフトウェアエンジニアリング、プロセスエンジニアリング、IoTやデジタルツインなどの先進的デジタル技術に関する知見を蓄積してきました。
これらの研究開発によって培われた知見を活かしながら、世界の大手企業に向けてビジネス課題の解決を支援してきたTCSの実績と、MotionLibが擁するリアルハプティクスの専門的知見を組み合わせることによって、新たな社会インフラ:Internet of Actions(IoA®)の構築に取り組んでいきます。
<TCSとMotionLibの共創の枠組み>
また、TCSは、独自のパートナーエコシステム「TCS COIN™(Co-Innovation Network: コイノベーションネットワーク)」を通じ、世界有数の学術研究機関とのパートナーシップを深め、お客さまのビジネス上の課題解決に取り組んでいます。
これらのパートナーとの共創拠点「TCS Pace Port™」 の第1号として、2018年、日本TCSに開設した「TCS Pace Port™ Tokyo」では、本年、製造業界のお客さまに向けて、新たな体験型ショールーム「Digital Continuity Experience Center(DCEC)」を増設しました。
MotionLibとの覚書の締結に基づき、DCECには、お客さまに向けてリアルハプティクスのデモンストレーション環境を構築する予定です。
慶應義塾大学 新川崎先端研究教育連携スクエア 大西公平特任教授は、次のように述べています。
「現代社会が直面する喫緊の課題に取り組むうえで、産学連携は従来にもまして重要になっています。今世紀のわが国では、少子高齢化が一段と進みます。こうした社会情勢において、私たちのQOL(生活の質)を高め、豊かで生きがいのある社会を実現するためには、ロボットのような人工的な存在を、人々の日々の暮らしをはじめ、製造、医療・福祉、農林水産・畜産など、社会のあらゆる分野に実装していくことが不可欠になるでしょう。リアルハプティクスは、こうした人とロボットの協調を実現する上でカギになる技術です。MotionLibやTCSをはじめとしたパートナーと共にビジョンの実現に向けて協力を積み重ねていきます」
モーションリブ株式会社 代表取締役CEOの溝口貴弘工学博士は、次のように述べています。
「リアルハプティクスは様々な応用分野で私たちの生活を豊かにする可能性を秘めた基本技術です。特に人間の生活の近くで、人間と協調するようなアプリケーションで真価を発揮します。TCSとCOINプラットフォームにて広い視野で技術活用を探索できることはモーションリブの事業成長のみならず、リアルハプティクス自体の技術成長に大きく繋がるものと感じております。今回の素晴らしい機会はリアルハプティクスの技術的な先進性とTCSの大胆な活動戦略が合わさって創出されたものです。このチャンスを活かし、加速的な技術普及に繋げられるよう取り組んで参ります」
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本TCS)代表取締役社長の垣原弘道は、次のように述べています。
「私たちは、モーションリブとの知的共創を通じて連携できることをたいへん喜ばしく思います。これまでTCSは、COINをプラットフォームとして世界有数の学術機関や有望なスタートアップ企業と協働し、さまざまなオープンイノベーションを成功させてきました。TCSとモーションリブのコラボレーションによって生み出されるIoAのソリューションも、必ずや社会や企業の課題解決に寄与すると確信しています。TCSが世界中で培った知見、技術応用のコンサルティングや開発・導入における豊富な実績、そして多様なタレントが生み出すアイデアを結集し、モーションリブとともに新たなイノベーション創出に取り組んでいきます」
以上
<参考>
リアルハプティクスがもたらすソリューション 「Internet of Actions (IoA®)」
リアルハプティクスの技術的価値(IoA®)とは、ヒトの五感のひとつである触覚の領域に新たにデジタル化をもたらしたことです。電話機(音声通信)の発明(1876年)やブラウン管テレビ(映像通信)の発明(1926年)に次ぐ、革新的な遠隔通信技術と言われています。
① 力加減や感触が伝わる「遠隔操作」
遠く離れた場所同士でも、触ったモノの硬さ・柔らかさの感触を感じながら作業できます。また、位置と力の伝送倍率を自由自在に変化させることができるため、人間の自然な動作範囲で巨大な、もしくは、微細な作業が可能になります。例えば、危険な作業を遠隔化し、作業員の安全を確保することが可能です。
② 職人的な技術や物性の「センシング」
人の力加減や、モノの感触を、位置・速度・力の観点からリアルタイムに数値化できます。また、物理特性(剛性・粘性・慣性)や、物体内部の物性構造の分析を可能にします。さらにそのデータを各種解析することで、例えば、車体の傷(凹凸)や衣服の材質(素材感)を、力触覚情報の倍率を増幅することで明確に認識すること、あるいは、非常に大きな力を有する作業を力触覚情報の倍率を縮小して、力触覚を感じながら繊細に作業することが可能です。職人の力加減の定量化・分析や、属人的とされてきた品質検査の精度向上にも適用が可能です。
③ 力加減を伴う作業の「自動化」
力加減を伴う繊細な動きを、スピードを保ちつつ自動化できます。また、ロボットが力触覚情報を踏まえて動くため、画像認識でモノのエッジを検出することが難しい場合でも、ロボットが手探りの力感覚で判断し、対応できる幅が広がります。
④ リアルな感触を仮想空間で構築する「VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・メタバース」
現実世界のモノの感触を正確にデータ化し、仮想空間上に取り込むことができます。例えば、仮想空間に存在するモノを現実空間のグローブを通じて触れると、あたかも現実空間でモノに触れているような感触が得られます。
モーションリブ株式会社(MotionLib)について
MotionLibは、リアルハプティクスで、人間にはあり、ロボットにはない、丁度よい力加減でモノを掴む、あるいは、モノを掴む時の優しさを実現することを目指し、2016年4月に創業した慶應義塾大学発ベンチャー企業です。MotionLibは、機械の力加減を操るリアルハプティクスを活用し、力触覚分析、遠隔操作、自動化、感触再現を通じて、人と機械が協働する豊かな社会づくりに取り組んでいます。MotionLibは、この実現のため、リアルハプティクスを搭載した制御ICチップ「AbcCore®」を開発、販売しています。
MotionLibの詳細については、www.motionlib.comをご覧ください。
* AbcCore®、リアルハプティクス®、RealHaptics®ならびに IoA®は、MotionLibの登録商標です。
タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)について
タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)は、世界中の大手企業における変革の道のりを50年以上にわたり支援している、ITサービス、コンサルティングおよびビジネスソリューション企業です。コンサルティングを基盤とし、コグニティブ技術を活用した、ビジネス、テクノロジー、エンジニアリングのサービスやソリューションを総合的に展開しています。これらをTCS独自のソフトウェア開発基準である「ロケーションインディペンデント・アジャイル・デリバリーモデル(Location Independent Agile™ delivery model)」を通じ、地理的な制約にとらわれることなく提供しています。
TCSは、世界最大規模の多国籍複合企業体であるタタ・グループの一員で、最高水準のトレーニングを受けた59万2,000人を超える人材を擁し、世界46カ国で事業を展開しています。2022年3月31日を末日とする会計年度の売上高は257億米ドルで、インドナショナル証券取引所とボンベイ証券取引所にも上場しています。また、気候変動に対する積極的な取り組みや表彰を受けた地域活動を世界中で展開しており、MSCIグローバル・サステナビリティ・インデックスやFTS4Eグッド・エマージング・インデックスをはじめ、主要なサステナビリティ指数の構成銘柄に名を連ねています。TCSの詳細は、www.tcs.comをご覧ください。